2012年10月11日木曜日

ソーシャルの仕掛け方_3

ソーシャルの仕掛け方_2より続く


【7.多正面として対応する】

ソーシャルはコミュニケーションなのに、画一的な対応をする企業アカウントが多いように思います。広報であり、お客さま窓口であり、案内カウンターでもあるというような多角的な役割を考えれば、内容によって対応のトーンを変えて当然ではないでしょうか。

商品やサービスに満足していただいた喜びの声と、お怒りのクレームとに同じトーンでの対応はありえません。広告や広報でのトーンアンドマナーは、ソーシャル以前と以後とでは、大きく変わったと考えた方がいいでしょう。
都合の悪い問い合わせなどには、返信しない。あるいは誤摩化すような対応をすればいいと考えられている方々も少なくないようです。でもどういう対応をしても、誰かに、いやたぶん大勢に注目されています。繰り返しになりますが[つながり]でチェックできる反応は、ごく一部です。ソーシャルの基本は「OPEN」ですし、ひとりひとりすべての人に対応することです。もちろん十二分に行き渡ってるはずの内容であれば、Twitterなら「お気に入り」にする。Facebookは「いいね!」する。Google+では「+1」することで対応するのも、あり。
クラスター、クラスタとして考えるのはマスマーケティングの発想。1対1であり、同時に1対多であるのがソーシャルです。






【8.相手が誰かを見極める】


ソーシャルではファンとか共感という、雰囲気でしかない言葉が重要視され、本質的なテーマを見誤っている対応が多いように思えます。芸能人が一番嫌う話しかけられ方、サインの求められ方として「いつもテレビで見てます」というフレーズがあります。テレビを通じて応援していてくれているともいえますが、映画を見てくれる、CDやダウンロードで購入してくれる、チケットを買って会場に見に来てくれるという人たちと比較すれば、はるかに重要度は低い。もっとも重要視すべきは、実際にお金を使ってくれているお客さまの声であることは間違いありません。

次に潜在顧客ですが、これもクラスター、クラスタで考えるのではなく、現実に購入や利用を表明してくれている人でなければ、ソーシャルで対応する価値は低くなります。実際のお客さまを最重要視し、顕在化した潜在顧客を次ぎに大切にすることによって、ソーシャルでの企業アカウントの価値が向上します。もちろん重要視といっても、標準の対応が丁寧なものであり、顧客に対してはそれ以上の感謝の気持ちを持って対応するということです。
例えば、かつての顧客で、今現在の商品やサービスが不満だという方に対して、どういう対応をすべきでしょうか。丁寧に対応するのはもちろんですが、商品に反映されない限り、不満は続きます。
あるいはとてもファンだと表明していても、購入や利用歴が、どう推測してもなさそうな人だって少なくありません。意見を言ってくれる、要望を出してくれる人が、その通りにしたとしても利用者/顧客になってくれるわけではありません。

またリツイートや引用などをしてくれる人はありがたいですし、大切にすべきですが、フォロワー数は大きく異なります。1対1であり、同時に1対多でもありますが、フォロワー数が2万人に達する人だっています。どういう人が、どういう内容で、どう反応してくれたか。そこまで見極めながら運営すべきです。バイラルを狙うのは、これがポイントです。もし影響力の強い人たちを捉えずに、大きなバズを狙うのであれば、炎上マーケティングしかないのではないでしょうか。


実際には、ここまでするのには反射神経的なスピードの速さも求められまし、かなり属人的なスキルといえるでしょう。。マニュアル化することが難しいですが、ソーシャルの運営では、必要条件だと考えています。




【9.お客さま相談室的な側面】


ネット企業では、ユーザーサポートをメールに限定し、しかも何を問い合わせてもテンプレートのコピペ的な文章を送ってくるという声をよく聞きます。個別対応をしないことで、コストを抑制する。弱みを見せないことで、訴訟を回避するという戦術だと思われます。ソーシャルでも、これと同じことをしている企業アカウントが少なくありません。何を聞いても同じことの繰り返し。でもそれなら、コミュニケーションを取らずに、一方的な情報発信に徹した方がマシです。ソーシャルメディアを、郵便で送るDMと同じように使うわけです。ただこれは、有効なリストを揃えているわけでもないので、あまりに稚拙です。


私は経験的に(とても短いですが)、サポート的な対応を求めて来る人のほぼすべてが、解決すると強力なインフルエンサーになってくれます。もちろん影響力の大きさはさまざまですが、積極的に拡散してくれたり、ソーシャルグラフの中で薦めてくれています。サポートしたことで、その人が今度はサポーターになってくれる。ファンという、曖昧な存在よりも、はるかに心強い味方です。




【10.クレームへの対応】


また親しまれると親しまれるほど、気軽に強い調子でのクレームが来ることがあります。クレーマー的なケースもありますし、ソーシャルで対応が不可能な内容もありますが、それ以外の場合は、対応した方がいい。批判的な内容からクレーマーだと判断しがちですが、実際には熱心なファンで、こちらの落ち度を指摘してくれただけというケースもあります。例えば製品の中に説明書などのアイテムが足りなかったとか、サービス内容の問題を伝えたかった。それが特にTwitterは文字数が限定されますので、詳しく説明できず、怒りがメインに見えてしまうと考えられます。

そういう場合に紋切り型の、テンプレートのおうむ返しをしていると、まっとうな指摘をしてくれた人がクレーマー化してしまうことが少なくないのではないでしょうか。そうなると、負のインフルエンサーになってしまいます。
恐れずに、同じように丁寧に対応することで、半数ぐらいはサポーターになってくれます。
それにソーシャルでは、負の情報の方が面白い。丁寧に対応していないと、すぐに拡散しますし、反応が少なくても、大勢からじっと見られています。




Tweet Up



【11.見られていることを意識する】

【6.反応こそ、すべて】と書きましたが、ソーシャルでは自分では何も発信しない、 返信や共有などもせず、いわゆるROM専的な人が圧倒的に多いです。反応がなければ対応しようがありません。こういう人たちをクラスター、クラスタとして捉える考え方もありますが、やはり大雑把過ぎる推測でしかなく、あまり意味のあることだとは思えません。
突如として、今日買いましたとか、利用しましたという嬉しい反応があることもあります。客でもないのに、発言したくないという人も、けっこういらっしゃると考えた方がいいでしょう。
発信することがゼロという人は、絡まれるのが面倒。あるいは、批判されたりするのが怖いと考えている場合も多いでしょう。私も、個人的なソーシャル利用の体験では、リアルな知り合いから突如として、「何々について書かれてましたけど、あれは面白いですね」ということがけっこうあります。先日は、中学生から言われて狼狽えました(笑) ソーシャルグラフの中に入ってきてくれればまだしも、隠れてやっているし、入って行くのが抵抗あると言ってました。

話を元に戻すと、この圧倒的なボリュームの浮動票層。この観察者たちに、バイラルで届けて、好感を持ってもらい、購入や利用につなげないと成功はおぼつかないと言えるでしょう。
この層にアピールするには、どうしたらいいでしょう。アクセスログ等から最終的には売上しか指標になるものはありませんが、ソーシャルの効果だけで、イコール売上になるわけではありません。
「OPEN」な態度で、社会から好感を持たれる、いい関係を作っていくしかないでしょう。





【12.解析ツールに頼らない】

Facebookは話題にしている人や合計リーチを送ってきますし、有料の解析ツールは世の中に溢れています。確かに会議に出すのに数値化は便利ですが、どれだけ数値にしたところで、実質的には見える化/可視化ではないでしょう。まず数値化という発想自体が、やはりマスマーケティング。ざっくりとした数値は、傾向を見るのに便利ですが、悪い評判だって「話題にしている人」ですし、影響力にもカウントされます。ワードでポジティブ・ネガティブを判定するツールもあるようですが、それがどれだけ有効か、関心がおありなら、それぞれのソーシャルメディア内で検索してみてください。ワードではなく、文脈で捉えるような解析は、まだないのではないでしょうか。

そんな暇があるなら、ヴァーチャルな接客に労力を割いた方が有益でしょう。リーチがマイナスになると何かしなきゃいけないと、気が焦る。そこで最初に書いたように「壊れたふりをして」雑談に走ってしまうという悪循環に陥ったり、ただただ面白みのない同じ宣伝文を繰り返し発信し続けるというケースが多いように思えます。
もし、一方的な発信で受け入れてもらえる、話題にしてもらえるようにしたいなら、新商品をどんどん出し続けたり、新しいキャンペーンを次々に繰り出すしかないでしょう。それよりは、ソーシャルでいい関係を作ることの方が、はるかに安上がりです。



次回は、まとめです。

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