2015年1月16日金曜日

写真の加工や合成は、どこまで許される? どのぐらいが適正なのか?


広告などに使われる写真の合成は、どこまで行くのでしょうか。かつては化粧品の広告に登場するモデルの毛穴がないことが話題になったりしましたが、今ではどんな広告写真に登場する俳優やタレント、お笑い芸人の顔まで、ほぼ毛穴がなくなっています。

先日もクライアントの担当者と打ち合わせしていて、それはあり得ない設定だから技術的には可能だけれども、やらないほうがいいと思いますとお話しして。じゃあ、どこまでが許されるのか、“あり”なのかということになりました。
私自身の中には明確な基準がありますが、でもそれは個人の感覚。職業的な知識もありますし、訓練されているところもあります。一説には色の識別能力は30歳を過ぎると、何もトレーニングしていないとどんどん落ちていくとか。

作りたいイメージ、誰に向かってアピールしたいのかということと、その完成度。そして倫理的な側面があります。
プリクラがありなら、世の中的にはなんでもありになっているとは思います(笑)


写したものがリアリティがあって、合成したものがリアルじゃないとは限らない


写真はライティングでも、大きく変わります。すべてのものが写るとは限りません。良くも悪くも写真が、肉眼で見たときのイメージとは異なっているという経験は、誰しもありますよね。
実際に画像で、順をおって見ていきましょう。
ステーキを焼いている写真です。



A. 焼かれて肉汁が飛び跳ね、煙もけっこう出ています。炎まであがっています。じゅーじゅーという音が聞こえてきそうです。
網焼きで火が出るということは、脂が燃えているんでしょうか。脂を落としたいときに、網焼きにするんじゃなかったでしたっけ。



B. 炎が消えています。ない方が、違和感ないですね。



C. 煙がずいぶん少なくなりました。肉汁なのか脂なのか、跳ねていたり、鉄の上を汚していたのが消えました。



D. 肉の量が減りました。厚みが6割ぐらいになったような…
そうです、D.がオリジナルの写真です。

あなたは、どれが適切な写真だと思いますか?
合成していることがわからなくても、料理に詳しい人なら、ヘンだなと思われたかもしれません。

この場合なら、オリジナル写真以外はありえないと思います。肉を増量させているのは、まるで詐欺ですね。私がやりました(笑)
煙を足したり、少し跳ねや汚れを加えてもいいとは思いますが、網焼きなので、ほんの少しあるぐらいが適切だと思います。おいしそうに感じてもらえるシズル感の演出は、それぐらいでしょう。



ただ跳ねや煙はライティングによって、写らなかったりします。背景が黒っぽくないと、なかなか難しいでしょうね。湯気も同様です。
かつては薬品などが使われていましたが、いまは合成で簡単です。簡単だから、ついやり過ぎてしまっているものを見かけることが多くなりました。


どんなのがリアルな肌なんでしょう


アプリやウェブサービスなどで、驚くほど簡単に写真の加工ができるようになりました。その多くは加工しましたということが一目瞭然ですので、リアルなものなのかどうか紛らわしいということは、まずなくなりました。

最初に書いたように、広告に登場する著名人の顔から毛穴がなくなっています。その多くは加工ですが、そうではない人も増えています。
テレビに出ている人たちは、地上波デジタルになってから高解像度でアップが放送されることへの自衛かもしれませんが、医療機関でスキンケア治療を受けている人が多くなっているそうです。フォトフェイシャルというマシンを使うと、毛穴が小さくなったり、ヒゲが生えてこなくなったりするそうです。

だからテレビで顔のアップになっても、つるんとした顔の人が増えているのかもしれません。あながち写真が美肌なのは、加工ばかりではないようです。
アナウンサーから俳優、政治家から芸人まで、ヒゲのないのは不自然だと思うのですが、このへんの感覚は、日々見ていると、どんどん変わってくるのかもしれません。


詳しい人は敏感にチェックし、チェックする人は増え続ける


以前は整形していると、造りもの。と言われたりしましたが、基準をどこに置けばいいのでしょう。

整形に詳しい人たちは、芸能人ばかりではなく、友だち同士でも「やってる」「やっていない」というチェックが、会話の中で飛び交うと言います。同様に、写真の合成や加工に関しても、詳しい人たちはチェックしているのです。
チェックできるほど詳しい人が多いかどうかですが、ふたつの理由で増え続けると考えています。
インターネット、特にSNS人口が増えてきて、写真を投稿する人が増えています。写真がメインのSNSも増え、アプリやウェブサービスなどで加工する人だって増え続けています。合成しようとすれば高価なPhotoshopなどが必要でしたが、ソーシャルメディアに投稿する程度のハメコミ合成ぐらいならアプリで出来てしまいます。
少なくともそういう合成のプロセスを知っている人が増えているのが、今。この先どんな高度なことができるサービスが無料、あるいは安価な手段で出来るかもしれません。たぶん、できるでしょう。

そして失敗作、リアリティのない合成を見つけると、ソーシャルメディアで共有される。プロだって、発信してしまう時代になっていますよね。
YouTubeには世界のPhotoshop職人の「やっちゃった」画像を集めた動画が、数多くアップロードされています。

だから私は、詳しい人目線を基準にして、合成や加工をすることが当然だと思っています。さらに言えば、触らなくてすむ写真を撮るのがベストですね。


※写真に関する投稿
SNSで使える生写真の撮り方

※光と影に関する投稿
平たい顔族の、『陰翳礼賛』の行方


※ステーキの写真は、こちらのものを使用しました。





バナー:ウェブ、グラフィック、そしてソーシャルなつながりをデザインする制作会社です


0 件のコメント: