2012年12月28日金曜日

ソーシャルの仕掛け方_5

ソーシャルの仕掛け方_4より続く


ソーシャルメディアの活用方法として、ユーザーが見ている時間帯を想定して、そこに合わせて発信するのが有効だとする意見があります。でも見ている時間帯を想定できるものなのでしょうか。
いろいろ想定したところで、スマートフォンなどでアクセスする人も増える一方ですし、働いている時間帯も人それぞれです。
さらには、例えばTwitterであればフォローしてくれている人のほとんどに情報を届けようとすると、時間帯を特定した発信は意味があるとは思えません。Facebookなどでは、特定の時間帯に企業ページからの投稿が増えても、すべての投稿がニュースフィールドに表示されるわけではありませんし、ページフィールドを見てくれたところで、逆に多くの投稿に埋もれてしまうだけかもしれません。


じゃあ、どうするのがいいでしょうか。
ソーシャルの仕掛け方_4で、「12.解析ツールに頼らない」と書きましたが、複雑な解析は必要ないと考えています。でも簡単なツールで、大まかに把握してことは必要でしょう。
グラフィカルTwitter分析whotwiというものを使ってみました。無料で、とてもわかりやすいツールです。
これで様々な企業アカウントの動きを観察してみました。ある、同じ日に分析した結果の一部を抜粋させていただきました。




これは大手通販会社のカスタマーサポート的なアカウントです。
特徴的なのは、@率が96.5%。お問い合わせに返信しているのが、ほとんどです。1日の平均ツイート回数が50回ですから、たぶん複数の担当者での対応でしょう。
また時間帯が見事に、平日の10時から17時台に収まっています。これは多くのサポートアカウントに共通するのですが、対応する時間帯を決めておかないと、対応しきれません。

















こちらは大手アパレルグループのアカウントです。ECサイトもありますが、実店舗の方が扱いが大きいんだと思います。
特徴的なのはツイートしている時間帯。なんと、土日も含め朝の7時から深夜2時まで発信されています。ところがひとりごと率が99.7%というところが、残念です。調べてみると、同じことを何度もツイートする連呼型の情報発信だけ。ユーザーとコミュニケーションは、まったくと言っていいほどありません。

単独の発信で、同じことを繰り返すということは、ほとんどのフォロアーに届いているだろうと想像されますが、親しまれているとは思えません。











若者向け大手ファッションECサイトのアカウントです。
特徴的なのは、1日の平均ツイート回数が2.6回。どう考えても少な過ぎます。しかも販売の主力であるはずの土日には、ほとんど発信されてもいません。
リンク付き率が77%で、たぶん自社ECサイトの商品ページとのリンクだと考えられますが、ここは妥当なところでしょう。平均ツイート間隔が9時間ということは、「1.場をあたためる」なんてことは到底無理で、ECサイトオンリーの会社の使い方とは、とても思えません。
ちなみにこの企業の主力プロモーションツールは、メールです。楽天的な手法ですが、ファッションでどうなのかと、疑問です。











大手通販会社のアカウントです。ECにどんどんシフトされているようです。
特徴的なのは、@率が89%1日平均のツイート数が55回で、しかも月木金、なかでも金曜日に集中してツイートしているということは、メインとなる働く女性たちとのコミュニケーションを主目的にされていると思われます。たぶん、金曜日の夜からの注文が多いのではないでしょうか。月曜日は、そのフォローだと想像しています。
平均で1日55回。火土日はまったくツイートされていませんので、金曜日はすさまじい数のツイートだと思われます。きっと、関係ない人のTLには表示されないReply(頭に@+ユーザー名を付ける)でコミュニケートされているんでしょう。











大手家電メーカーの女性向けブランドのアカウントです。ここはもう、チェックして驚きました。1日平均のツイート数が0.2回。平均のツイートの間隔が5日。そして平日の昼間だけで、ひとりごと率が97.3%という一方的な発信のみ。 高齢者がターゲットであれば、それでもいいと思いますが、むしろ、情報収集をネットでする層にニーズが高い。店頭で試してネットで買うショールーミングというよりも、口コミでの評判を重要視されそうです。これだとアカウントを持たない方がいいという気がするのですが。















 中食デリバリーの大手のアカウントです。ECサイトへのシフトが著しいのではないかと思います。早朝をのぞき一日中ツイートされています。しかも@率が99.5%。どうなっているんだろうと調べてみました。単独の情報発信もされていますが、Twitter上で関連するワードでツイートされたものを検索し、そのツイートに対してReplyされたものが、数多く見受けられました。つまり積極的に絡んで、コミュニケーションされている。反感も持たれていないようです。これで売上にも密接につながっているなら、もう脱帽するしかありません。





そしてこれが、当社で運営させていただいているアカウントです。朝9時から深夜まで。そして@率71.7%とコミュニケーションを主体としながら、バランスのとれた運営が出来ているんじゃないかと思っています。
時間帯や曜日も、ほぼ均等に発信することによって、ユーザーが反応してくれやすい時間帯もわかってきますし、同じ内容を別の切り口から書いたりすることで、ほとんどのフォロワーに届けられ、また何度もツイートを見ている人にも、なるべく嫌がられない発信ができるのだと思います。








ソーシャルメディアを運営する上で、まず最初に考えておかなきゃいけないのは、運用のスタンス。理論を重要視するより、実際にやってみた反応で修正していくことも大切ではないでしょうか。 当社がソーシャルメディアを運営させていただいているクライアントから、単独発信ではないReplyが多過ぎるのではと指摘されたことがあります。一覧でチェックすると、そうなんですね。伝えたいことを言っているツイートの何倍もの、フォロワーとのやりとりが、ずらーっと出てくるのですから(笑) 
でも、そんなチェックの仕方をするのはクライアントと、あとは調査している人だけです。フォロワーとのやりとりがあるから、安心して絡んで来てもらえるし、いいバイラルが起こりやすい場を形成できるのだと思います。 もちろんソーシャルメディアを取り巻く環境や季節要因などによって、状況は日々変化しています。たとえば今日なら、仕事納め前後でアクセスする人、発信する人も少なくなっています。そこでどんな運用をしていくのが効果的か。反応を見ながら、変化させることが必要ですね。




2012年12月3日月曜日

見ているものが違う。

先日、仕事で使うバッグを買い替えた。使っていたものがヘタって来て、そろそろ新しくしなきゃあなぁと思って。
もちろん会社の周囲には、腐るほどバッグを扱っている店がある。でもあちこち見て歩くような時間はないので、ネットでちょくちょく検索するようになる。結果、いろんなEC、A社やB社、C社のサイトに辿り着く。すると当然のように、個人のブログに行った時でさえ、ABC社の広告が表示されるようになる。ネット関係者には当然すぎるほどの、行動ターゲティングやアドエクスチェンジというやつだ。これが効果的だという主張は、さんざん聞かされるけれども、そうなんだろうか。私がバッグを買ってしまった後も、けっこうな期間表示されていました。

もっともリコメンドの仕組みが優れていると言われるAmazonでさえ、私に送られてくる「おすすめ商品」のメールはスパムのようで、けっこう笑える。アフェリエイトで表示させるために検索した書籍や、あるいは仕事のために検索しただけの商品をすすめてくる。仮装やコスプレなんていう趣味はないですから(笑)

Yahoo! メールを利用するため、Yahoo! JAPAN IDに登録する。生年月日等を聞かれる。するともう、サントリーの精力剤的サプリばっかりが表示されるので、笑うのを通り越して、うんざりしてくる(笑)




本当に、こういう手法が効果あるんだろうか。そりゃあ、一定の効果はあるでしょう。楽天などは日本での先駆者で、効果をあげているんだから。ただ“誰にでも”効果があるわけじゃないということでしょう。あるアドエクスチェンジを検討していたクライアントは、2chまで追いかけてくるなんて、普通は気味が悪いと思うから、うちは使わないとおっしゃっていた。


ネットやITの世界は、パーソナライゼーションが異常なスピードですすんでいる。Googleは、個人に最適化した検索結果を表示させるために、どんどん進化している。ユーザーが過去に検索した言葉やログイン場所。ブラウザーなど57種類ものシグナルを利用して、検索結果を表示するようになった。
これが便利だと思ったことは、私はないんですが、パーソナライゼーションの結果どうなるか。
行動ターゲティングやアドエクスチェンジなら、結局は広告だから、多くの人が広告だと認識している。それを、しつこいと感じる人もいるし、なんだろうと思ってクリックする人もいるでしょう。だけど検索結果が、異常にパーソナライゼーションしていたら。







ブランド価値なんて、世間がどれだけ知っているか、どう感じているかをベースに、個人の価値観が形成されていることが多いんじゃないんだろうか。たとえばエミリオ・プッチというブランドは、女性ならセレブ向けで憧れの対象だという認識でしょう。でも多くの男性にとっては、エミリオ・プッチを着ている女性を見ても、ヘンな柄の服着てるなぁとしか思ってないかもしれません。若くても、おっさんでも、たぶん年齢を問わず。
それはまず、ブランド名の認知が低く、世界中のリッチな女性が着ているという情報を知らないからではないでしょうか。

情報が共有されている女性同士なら、とりあえず、まあステキねぇとなるからok。でもモテを考えている女性の選択肢からは、外れてしまうかもしれません。

女性向けファッション誌が根強く読まれていたとしても、ネットの無料情報がどんどん拡大していきます。そして「異常なパーソナライゼーション」の結果、むしろ共有されない情報の方が圧倒的になっている今、そしてこれからはどうでしょう。
もしかしたら情報化社会は、可視化というような言葉で表現されるようなオープン方向ではなくて、急速にクローズドに向かっているような気がします。


考えてみれば、これだけ政党が乱立しているのに、本当のところは何を約束しているのか、よく分からない。約束していることを信じている人は、ほとんどいないというカオスな政治状況が象徴しているかもしれません。
何かの購買行動を起こす時に、ネットの評判をチェックするという人が少なくありません。だけどきっと、出回っている評判が、仕掛けられたものだったり偏ったものだと疑っている人も増えていることでしょうね。








2012年11月26日月曜日

参加することの価値

以前、「行列までして、買ってくれることの価値」という記事を書いた。
相変わらず、Q-FRONTのツタヤではコミックの作者によるサイン会に、朝早くから行列が出来ていたりする。タワーレコード渋谷は、「ライブ感」をテーマにリニューアル。どうもライブを見に来て、CDなどを買ってもらうというストーリーを描いているように思います。




先週、あるプロのミュージシャンから「最近は、ライブ会場でTシャツなどを販売していて、その売上がバカにならない」と聞いた。もちろん、ライブ会場でのグッズの販売が増えているという話はよく聞くけれども、ジャズの人なので、観客の年齢層は高い。それでもTシャツが売れるなんて。私はジャズの世界はまったく知らないので、ちょっとビックリ。

かなり以前から、音楽がタダで手に入るようになり、収益源がライブにシフトしていると言われたりする。あるロック雑誌は、雑誌では儲からないけれども、フェスで収益を上げているという。
オープンデータを調べてみた。社団法人コンサートツアー事業者協会というところが、有料の演奏会における「年別事業規模」を公開しています。

社団法人コンサートツアー事業者協会


2009年の数字までしか発表されていないけれども、トレンドとしてはコンサートに価値を感じる人が増加しているんでしょう。売上のうちグッズ等の物販がどれぐらいなのか、この数字からはわかりません。




音楽以外でも、読書会だったり、セミナーだったり、あるいは街コンみたいなことまで、体験する経験する生を見るということが、とても活気づいているように、私は感じています。どこにも、そんなデータは転がってないですが(笑)
セミナーは、企業から派遣されて受講するようなものではなく、個人が参加する怪しげな成功ものから、銀行や証券会社の実施する富裕層向けのものまで。どんどん増加しているような気がします。参加者数はわかりませんが、セミナー数はたぶん増えている。


セミナーが隆盛だということは、起業だったりネット関連ではなかば常識のように語られていて、そのことを「◯◯さんのサイトが面白いと言うより、◯◯さんの勉強会に出たとツイートする方が注目される」と自己顕示的な解釈をされることが多いように思います。
つまり、ソーシャルで発信するネタということですね。
それもあるかもしれません。ただ、ソーシャルでは何をしてきた見てきたと発信する人が、それほど多いとは思えません。むしろ自分の行動を逐一公開する人は少数で、せいぜい何を食べた。どこへ遊びに行ったという大雑把な情報を出しているぐらいではないでしょうか。


ちなみに、もちろん2012年の様々な調査データは出ていませんが、2011年の「スポーツ参加市場規模」について、マクロミルと三菱UFJリサーチ&コンサルティングが調査しています。それによれば、2010年と11年を比較して、「観戦」「用品購入」「施設利用・会費・スクール料」ともに減少していると出ています。市場規模は初の3兆円割れだそうです。




一見すると、なんだよ参加市場下がってるんじゃんとなるかもしれません。でも3.11があっての数字。特に施設利用・会費市場・スクール料に関しては、11.6%減。もしかすると、これは驚異的な根強さなのかもしれません。特にスポーツをすることに関しては、低下している参加市場の中でも変動が少ない。


これはソーシャルでの発信ネタ、なんていう弱い動機ではなくて、リアルで参加すること、さらには自分でやることへの価値観が拡大しているとは考えられないでしょうか。
スポーツなら、自分でやるようになれば、もちろん用品も購入する。
観戦しに行けば、そこでしか購入できないファングッズを手に入れる。より積極的な、体験への参加が喜ばれている。



今年行なわれた奥田民生さんのライブでは、その日演奏されたものを即座にマスタリングし、短時間で複製、会場で『お持ち帰りCD』として販売したという。即座に完売。
ファンのコレクションアイテムという考え方もあるけれども、いまやCD販売枚数よりもライブ動員人数の方が完全に上回るというアーティストが多いと言われる時代。『お持ち帰りCD』という希少性とともに、まるで参加したライブのテンションをそのままパッケージ化してくれるようなサービスが、積極的にサイフを開かせたのではないでしょうか。


参加すること、体験すること周辺のマーケティング。拡大しそうです。




TOWER RECORDS SHIBUYA -LIVE LIVEFUL!- CONCEPT MOVIE




TOWER RECORDS SHIBUYA -LIVE LIVEFUL!- INTERVIEW MOVIE DIGEST


2012年11月7日水曜日

ソーシャルの仕掛け方_4

ソーシャルの仕掛け方_3より続く



事前に決めておくこと。ソーシャルに向き合うスタンス。

3までに書いたことは、実際に“中の人”をやった上での見解ですし、かなり具体性のある内容です。ただその前に、すべての企業にソーシャルメディアが必要か、ソーシャルマーケティングを同じように仕掛けられるかというと、そんなことはないでしょう。

事前に決めておくこと。ソーシャルに向き合うスタンス。















































あらゆる企業がソーシャルメディアでなんらかの発信した方がいい、と思います。でもそれは、ネット上に情報がなければ存在しないのと同じだという、消極的なエントリーレベルの話です。
B to B企業で著名なら、そこそこの情報発信をしておけばいいと思います。B to Bで無名なら、たぶんソーシャルメディアで自前で何かやるのは無駄でしょう。お金をかけて広告するなり、大々的なプロモーションを仕掛けるしかない気がします。


今回ブログに書いていることの対象は、フローの右下のケースです。
上のフローに書いていることを、違う言葉で言うと「B to Cの企業は、ソーシャルメディアでコミュニケーションする必要がある」「マーケティングしようとするなら、様々な役割をソーシャルメディアに担わせる、集約させる覚悟が必要だ」ということです。
よく企業のソーシャルメディアアカウントの紹介文に、「お問い合わせ等は、お客さま窓口までお願いいたします」というようなことを書いていて、公式サイトの該当するURLなど書いていることがありますが、そうするなら情報発信するだけ。新聞の文字だけの広告や、ウェブのリスティング広告とかわりはないでしょう。

コミュニケーションするなら、問い合わせやクレームにも、ネットならではのスピード感のある“1次対応”が不可欠です。それなしに、ブランディングだろうが販促だろうが、効果のあるソーシャルメディアマーケティングは成立しないのではないでしょうか。
むしろ、これからのマーケティングは、そこが重要になると思います。宣伝、販促、SP、PR、顧客対応、問い合わせなどなどの機能を集約した形でのウェブ化が必要だと考えています。

ソーシャルマーケティングの立ち位置

高額商品でもなく、コミュニケーションしない場合というのは、どういった企業に向くでしょうか。すでに強力なファンがついているブランドであれば、ありでしょう。また常におトク過ぎるほどおトクなクーポンや割引サービスでも可能ではないでしょうか。
大多数の企業は、そうではありませんので、双方向のコミュニケーションして行くことが必要だと思います。コミュニケートしていれば、当然、発信した情報への問い合わせがあるでしょう。それに答えないというのは考えられません。発信したことと無関係のクレームや難癖のような絡まれ方をすることも出てきますが、そこは相手が誰かを【8.相手が誰かを見極める】こと。お客さまであれば、丁寧な対応をすることが必要ですし、そうではなく、理不尽な内容なら無視してもいいかもしれません。
経験でいえば、後からわかったことですが、店頭での対応に腹を立て、金銭を要求された方に、ソーシャルメディア上では丁寧に対応していたため、穏便に解決することができました。

またすべての宣伝やユーザーサポートをソーシャル上で行なえるわけではありませんので、切り分けや役割分担をどうするか、事前に協議しておく必要があります。



ツイートや投稿の考え方

ツイートや投稿の考え方:A


2.の臨場感は、たとえば「買い付けに来ています」「◯◯◯の準備中です」「◯◯◯、入荷しました!」「明日から、始まります」「開店しました」などなど、ほぼリアルタイムな発信は、カウントダウンやティーザー的な要素もあり、オーディエンスの興味をそそります。また当社がやったような、ほぼ同時中継するようなやり方は、その場の興奮を伝えることができると思います。FacebookやG+では、事細かには出来ませんが、Twitterなら細かくやることも可能です。

3.のシズル感のシズルとは、ステーキの焼ける音を指していると言われます。音、温度、匂い、質感などが伝わるような写真は、言葉より、はるかに強く速く伝わります。工業製品は、シズル感を出せないかというと、プロならそんなことはありません。無機的な工場でさえ、静的に撮ってしまうと味気なくても、マシンの動いてる様子をダイナミックに見せることはできるでしょう。
また製品の製造工程、特に人が関わっているところなど、現場の“裏側見せ”でも、そそる画像になると思います。それもファン作りですよね。



4.5.6.7に関しては、「ソーシャルの仕掛け方_5」で実例をあげて、再度書きます。

8.は本当に大事。基本はすべての人に、対応するけれども、お客さまか、お客さまじゃないのかで、対応のスタンスを変えてもいいと思います。
また対話はないけれども、何度もリツイート等で広めようとしてくれている人などには感謝の気持ちを伝えるべきだと考えます。話しかけてくれる人、コメントをくれる人、いわば仲間内でのコミュニケーションだけで終わっているのは、本当にマズい。ファンを阻害しているようなものです。
著名なソーシャルマーケティングのコンサル的な人でも、狭いつながりの中でしかやりとりせず、旧態然としたマスマーケティングどころか、利権商売のように思えてしまいます。

ツイートや投稿の考え方:C

9.から12.は、とても難しいカテゴリーですので、簡単に追記できません。複数での役割分担か、あるいは豊富な経験を持つ人たちのバックアップが必要でしょう。



さらにディープなソーシャルマーケティングの考え方


2012年11月1日木曜日

仮装・コスプレの大ブレイク

昨日の夜は、会社を9時ちょっと前に出ました。
タワーレコード渋谷あたりから、ハチ公前のスクランブル交差点まで歩いてる間に、もうビックリで。若い、たぶん20代前半ぐらいまでの仮装した女の子たちが、どんどん歩いてきます。半分ぐらいは仮装してるんじゃないのという印象で。男前な女の子がビシッと、バットマンのジョーカーの扮装をしていて、あまりのカッコ良さに目が釘付けになったりしていました。
10月31日は、ハロウィン。だからって平日の夜なのに、これだけいるなんて、どれだけハロウィンの仮装が定着したんでしょう。

10月26日金曜日の夜も、けっこう仮装している人たちがいました。多くのお店では、たいがい27日の夜に、ハロウィン関連のプロモーションをしているようでした。
たぶん、ハロウィンの盛り上がりは、先週末がピーク。そんな風に思っていたら、案の定、ネット上ではいろんな画像が飛び交っていました。
もっとも多かったのは、たぶん渋谷のコスプレでしょう。アニメや戦隊もの、映画やディズニー、そしてファストフードまで、さまざまなヒーロー、ヒロイン、キャラクターのコスプレが出現。その目撃情報やセルフの情報発信。






ところがところが、31日はそんなもんじゃなかった。ネット上ではさほど出ていなかったように思いますが、若年層、特に女の子の仮装はとんでもなく多かったという印象です。

あ、コスプレと仮装の違いって、なんでしょう。コスプレは、キャラクターになりきること? 仮装は…、特定の何かではなく、過剰な非日常的な装いということでしょうか。ホントのところは、わかりません(笑)
考えてみれば結婚式だってハレの装いですが、儀式系のハレの場がなくなってしまった。どこかで責任のない、ハジケた変身をしたいということでしょうか。ディスコはクラブになって、お見合いパーティは街コンになって、ほぼ日常の延長線上でカジュアルな場になっているようですし。

理由はともかく、これだけ仮装やコスプレのパワーがすさまじいと、来年からのハロウィンの販促プロモーション、従来とはレベルの違う取り組みになりそうな気がします。




そう思い始めたのは、ハロウィンからじゃなくて、9月の下旬。真昼間の渋谷公会堂の前に、コスプレイヤーが集結してました。拡声器で「ゴールド会員の方はこちらです〜」と言ってたので、なんかアヤシイ。これはなんだろうと思って検索したら、しょこたんのギザ10 しょこ【生】ツアー---!! 2012」というライブでした。十二分に、アヤシイですけど(笑) 
でもその時に目の前を歩いてた、ドナルドダックの完成度が驚異的で。お尻の丸みをどうやって出して、どういう構造でキープしてるのか不思議で。テクスチャーは違うけど、TDLにいても違和感なさそうでした。日本のコスプレイヤーって、趣味のレベルじゃないだろという感じました。


その少し前には、ANAがIS JAPAN COOL?というキャンペーンサイトで、[COSPLAY]という世界的なコスプレイベントと連動したコンテンツをリリースしていました。それ以前のリリースは[TOKYO][OKINAWA]ですから、ストレートな海外向けの訪日促進。でもコスプレで集客できるのかと疑問ですよね。



サイトやYoutube動画を見ているうちに、これはANAのマーケティングは確かかもなと思えてきました。もちろんコスプレの聖地ニッポン的なポジションを使った、ある種のキラーコンテンツということもあるでしょう。
仮装やコスプレって、たぶん見てくれる人がいないと成立しなさそうです。聖地ニッポンでも、見せられるのはきっと、ライブやイベントなどでしかなく、さほどメジャーなものではないでしょう。そこにANAが人に見せられるプラットフォームを作ってしまえば、ネット上の聖地になるかもしれません。リアルでも聖地巡礼は、あるでしょう。アニメ・アイドルで秋葉原、ファッションで渋谷へは、世界中から聖地巡礼が少なからずあるわけですし。




話を戻すと、ハロウィンは、大勢のコスプレイヤー以外の人にも見せられるハレの日。特異日、特異週間になりつつあるという気がします。
原宿では、30年も前から親子で参加するハロウィンパレードが行われています。とりあえず今年は、渋谷、六本木あたりが、若者のリアルなプラットフォームになったということでしょう。たぶん、来年以降は東京都心のいろんな街に、その後は徐々に全国に広がって行き、秋の仮装イベントとして定着するかもしれません。

それだけ多くの人に、ちょっとした変身したい欲求が高まっているのかも。別人になるというような大げさなものではなく、テンションをグンと上げたいような衝動。

ただ男装はたいがいカッコイイですけど、どんなに衝動があっても、
お願いですから女装だけはヤメて欲しい(笑)


あ、もしかしたら、私にも欲求あるのかもしれません。
合気道では、黒い袴を。杖道では、白い袴を穿いて演武しますから。
これって、完全にコスプレです(笑)


2012年10月25日木曜日

Twitterの真実

ソーシャルの仕掛け方_4を書こうと思ってたら、とても興味深い出来事が起こったので、そちらについての話題を。
その前に、さっと、NEVERまとめの「電車で見てしまったTwitterユーザーの真実」を読んでみてください。ネタもあるだろうけど、大筋でこんな感じだわ、と私は思っています。ネットサーフィン的に見ているのは様々な年齢層でも、満員電車でツイートしてるのは、どう見ても年齢層高いです(笑) 

画像:ツイッターロゴのフレーム


興味深い出来事というのは10月20日に、ZOZOTOWNの前澤社長が、購入客のツイートに対して激怒。暴言をツイートしたという話題。これが、あちこちで取り上げられていました。
私のタイムラインにも、リツイートされて流れてきて、一読して驚いた。その相手はどんな人なのとチェックしてみたら、最終的にわかったのは高校生ということ。しかも前澤社長の暴言ツイートの後も、冷静なツイートをしてる。私にはどっちが大人で、どっちが子供なのかというぐらいの印象でした。
この高校生は、前澤社長宛にツイートしたわけではなく、ただ「1050円なくせに送料手数料入れたら1750円とかまじ詐欺やろ〜ゾゾタウン。」と“つぶやいた”。一方、前澤社長はTwitterの検索で、たぶんゾゾタウンと入れて入力されたんでしょう。このツイートを発見して、激怒した。






ツイート直後からTwitterで炎上。前澤社長は、上のツイートを削除し、高校生はアカウント自体を削除してしまったそうだ。様々なまとめサイトでも取り上げられた。翌々日にはBLOGOSという500人以上の執筆者を持つ「提言型ニュースサイト」で、賛否両論、複数の記事が掲載されていました。

概ね、擁護する意見では、口調は問題でも言っている内容は正論。送料手数料が明記してあるのだから、それが契約というもの。お客さまは神さま式に、なんでも受け入れていては経営は成り立たない。なんでも安ければいいという客の存在がおかしい。詐欺扱いするのは、行き過ぎ。
否定的な意見では、まずお客さまへの感謝が先だろ。上場企業の社長の発言にしては、あまりに品がない。エゴサーチして発見したものに、罵詈雑言を浴びせるのはどうなのか。3万人のフォロアーを持つ社長から、ケンカを売られるのがどれだけ怖いか。株価が大幅続落している中、企業運営の先行き不安につながる内容。といったところでしょうか。


それぞれ一理あると思いますし、どれが正しいというものではありませんが、ソーシャルメディアマーケティング的な視点からすれば、また違った教訓を得られたのではないでしょうか。




1.検索は、本音を聞ける。定性的なリサーチとして捉える。


「ソーシャルの仕掛け方_2」の最後に、【6.反応こそ、すべて】と書きましたが、Twitter上では、企業アカウントに話しかけてくれるのは、強く好意を持ってくれているか、そこまでではなくても比較的丁寧な内容になっていることが多いと思います。

エゴサーチで出てきたツイートは、グループインタビュールームで語られるより、はるかにリアルな意見を得ることができると思います。今回の件は、ミラールームの裏側で聞いていた社長が、ガラスを突き破って飛び出して行ったようなもの。これからは検索したところで、ゾゾタウンに対して本音で率直に語っている人は少なくなるでしょう。残っているのは、読ませることを目的にした、過剰に否定的なツイートだけかもしれません。


画像:ツイッター検索窓




2.相手を見極めて、対応を考える。


「ソーシャルの仕掛け方_3」に、【8.相手が誰かを見極める】と書きましたが、今回のツイート主は高校生。私はまず、検索したツイートに反応すること自体がどうなのかと思いますが、とりあえず反応するとして話を進めてみます。

相手のプロフィールを読むなり、過去のツイートを読めば、なんとなく属性を知ることはできるケースが多いと思います。高校生ということがわかれば、1050円、1750円が大きな金額だと想像はできます。現実に購入してくれたお客さまですし、丁寧に内訳をツイートして当然。逆に、好感を持ってもらえたかもしれません。10代のお客さんは、これからのZOZOTOWNにとっても、とても貴重ではないでしょうか。



3.言葉の意味を、単純に解釈しない。


今回使われた“詐欺”という言葉に、「法的に詐欺ではない」「送料手数料が明記されているのに、認識していないのが悪い」「詐欺は、言い過ぎ」という意見があります。でもツイートした高校生は、詐欺という言葉を、どんな意味で使ったのでしょうか。たぶん、そんなに重い意味ではないように思えます。

私も例えば消費税などの内税方式について、「詐欺だ」という言い方をします。お店に対してではなく、いくらの税金を支払っているか、見えにくくしている意図に対して詐欺的な手法だと思っています。もちろん、法律で決まっているので、詐欺ではありませんが。女性が化粧を取った顔や、スタイルに対して、似たようなことを思った男性は少なくないでしょうよ。って、違いますよね、スミマセン(笑) 
仲間内で使う言葉、特にクラスタ内で使われている言葉を、一般的な意味でとらえるのは間違いです。だってTwitter内では、自分で自分のことを「乞食だからさ」と言っているツイートを見かけますよ。辞書に載っている「乞食」とは、かなり違いますよね(笑) 




4.見られていることを意識する。

【6.反応こそ、すべて】と真逆のような内容ですが、「ソーシャルの仕掛け方_3」に、【11.見られていることを意識する】を書いています。前澤社長は、3万人のフォロワーを持つ人。どれだけROM専的な人が多かったとしても、万単位のフォロワーの持つパワーは計り知れません。

ZOZOTOWNは、アパレルメーカーでもセレクトショップでもありませんし、単純化して言えばネットでのマーケティング力とシステムで成功した企業。プラス方向のバズの連鎖で成功したのは、特に自分から発信はしないけれども評価してくれたサイレントマジョリティの存在。ソーシャルメディア上での会話がオープンであることは、高校生よりもはるかに意識する必要があったのではないでしょうか。



最初に書いているように、ツイッターでアクティブに発言しているのは、たぶん年齢層高い。若年層は、仲間内だけでの会話のつもりで使っていることが多いように思えます(だからこそ、LINEが流行るのでしょう)。ツイッター社自体は、SNSではなくミニブログだと定義しているようですが、バズマーケティングという点では、現在のところ最も強力なソーシャルメディアであると思います。普段は、仲間内以外の反応がほとんどないと、ソーシャルであることを忘れてしまうのかもしれません。


「電車で見てしまったTwitterユーザーの真実」を読んでいると、それを知っているからこそ、おっさんは仮装して、別人格になる人がいるのかもしれません(笑)






2012年10月12日金曜日

奥村靫正さんをインタビューしてきた

今月の頭、YMO関連のアートワークや中沢新一本の装幀などで有名な、アートディレクターの奥村靫正さんをインタビューしてきました。

奥村靫正さんの作品サムネ


どうしてそんな仕事が回ってきたかというと、あまりに大御所過ぎて、ふたりのインタビュアーから断られたという。私は、奥村さんと一時期、濃く仕事をさせていただいたので、ぜんぜん平気。もっとも20年以上も、昔のことなんですが(笑)
                                       
クライアント側としての立場で、若かったし、かなり無謀なお願いをしたと思います。
ちなみに株式会社イグジィットのロゴは、立花ハジメさんの作。こちらはそんなお願いをしていないのに、ADC最高賞を受賞されたタイポグラフィのシリーズでお作りいただきました。
奥村さんは、その立花ハジメさんの、グラフィックの師匠でもあるんです。


EXITロゴ



奥村さんとの出会いは、ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』のカバーデザインや細野晴臣『SFX』のジャケットワークを見て、もうどうしてもこのコラージュの手法でやって欲しいと仕事を持ち込みました。コラージュでティーザーになるビジュアルを作って欲しいということだったんです。
『アルバイトニュース』が『an』にリニューアルする時の、ポスター制作でした。今考えると、よくまあ、そんな俗っぽい仕事を持ち込めたもんだと(笑)


奥村さんには、いろんなことを教えていただきました。雑談しているだけで、驚きの連続です。今回のインタビュー内容と被らないように、少し書いてみます。

当時は、MacやコンピュータでDTPという言葉が、出始めたころだったでしょうか。ただそれは、アメリカでエディトリアルのデザインワークがコンピュータで行なわれるようになったというもので、グラフィックデザインの世界では、しょせんデジタルでしょ。グリッドに合わせるだけだし、書体もちゃちいし、ぜんぜんダメ。ぐらいの扱いでした。
そんな時に、奥村さんのTHE STUDIO TOKYO. JAPANではMacからフィルム出力をしたりして、B倍ポスターを作っていました。当時、アメリカのAdobe本社のロビーには、奥村さんのポスターが何枚も貼られていたそうです。Adobeにとっても、イラストレータでこんな大きなポスターを作るなんて、事件だったのかもしれません。


奥村さんは、そもそも4歳で絵筆を握り始めたという絵師。日本画の中でも大和絵といわれる系譜だそうだ。今では大和絵の手法で描ける人は少なく、昭和天皇崩御の時の大嘗祭に起用されたほど。
当時奥村さんがおっしゃっていたのは、コンピュータでグラフィックをやるのと、日本画を描くのは、よく似ている。昔の日本画家は、家が火事になると失業すると言われていた。モチーフや文様などを写本にしたデータベースが焼けてしまうと、なにもできなくなる。それぞれデータベースから引っ張り出してきたものを、ひとつの絵として成立させられることを画力という。
コンピュータは、データベース。デジタルな線として使うばかりじゃなく、手書きの味が欲しければ、それをトレースするように描けばいいし。というようなことを、おっしゃっていたと思います。

写真:奥村靫正さん


そんなことを言うクリエイティブ関連の人は、最近でもあまりいない。もちろん、そのころは、聞いたことがなかった。近いのは、音楽の世界。サンプリングとリミックスみたいなことは一部で流行りだしていて、立花ハジメさんなんかは日本での先駆けだったと言っていいでしょう。


奥村さんは、絵を描く時でも、ここの文様はクリムトを持ってくるとか、和洋折衷に思えることをおっしゃるけど、たぶんコラージュ。デジタルもアナログも、和も洋も関係ないというか、縦横無尽。異なるジャンルのものを組み合わせて、破綻せずにひとつのビジュアルに定着させるんですから。


今回お聞きした話がどうだったか、書きたいところだけど、それはさすがにマズい。奥村さんのことはそれなりに知ってるつもりだけど、知らない話がいっぱい出てきたし、久々に色んな刺激を受けました。
どこの仕事かというと、一世を風靡した雑誌『Design Plex』。グラフィックやウェブというジャンルにとらわれず、デジタル系という切り口でクリエーターの必携マガジンだったけど、やがて休刊。それが、Design Plex Webとして帰ってきた。本格化されるのは、いつなのかわからないけど、今回の記事が出たら、ここにリンクを貼ります。
私はインタビューしただけで、書き手は違う人なので楽しみです。







2012年10月11日木曜日

ソーシャルの仕掛け方_3

ソーシャルの仕掛け方_2より続く


【7.多正面として対応する】

ソーシャルはコミュニケーションなのに、画一的な対応をする企業アカウントが多いように思います。広報であり、お客さま窓口であり、案内カウンターでもあるというような多角的な役割を考えれば、内容によって対応のトーンを変えて当然ではないでしょうか。

商品やサービスに満足していただいた喜びの声と、お怒りのクレームとに同じトーンでの対応はありえません。広告や広報でのトーンアンドマナーは、ソーシャル以前と以後とでは、大きく変わったと考えた方がいいでしょう。
都合の悪い問い合わせなどには、返信しない。あるいは誤摩化すような対応をすればいいと考えられている方々も少なくないようです。でもどういう対応をしても、誰かに、いやたぶん大勢に注目されています。繰り返しになりますが[つながり]でチェックできる反応は、ごく一部です。ソーシャルの基本は「OPEN」ですし、ひとりひとりすべての人に対応することです。もちろん十二分に行き渡ってるはずの内容であれば、Twitterなら「お気に入り」にする。Facebookは「いいね!」する。Google+では「+1」することで対応するのも、あり。
クラスター、クラスタとして考えるのはマスマーケティングの発想。1対1であり、同時に1対多であるのがソーシャルです。






【8.相手が誰かを見極める】


ソーシャルではファンとか共感という、雰囲気でしかない言葉が重要視され、本質的なテーマを見誤っている対応が多いように思えます。芸能人が一番嫌う話しかけられ方、サインの求められ方として「いつもテレビで見てます」というフレーズがあります。テレビを通じて応援していてくれているともいえますが、映画を見てくれる、CDやダウンロードで購入してくれる、チケットを買って会場に見に来てくれるという人たちと比較すれば、はるかに重要度は低い。もっとも重要視すべきは、実際にお金を使ってくれているお客さまの声であることは間違いありません。

次に潜在顧客ですが、これもクラスター、クラスタで考えるのではなく、現実に購入や利用を表明してくれている人でなければ、ソーシャルで対応する価値は低くなります。実際のお客さまを最重要視し、顕在化した潜在顧客を次ぎに大切にすることによって、ソーシャルでの企業アカウントの価値が向上します。もちろん重要視といっても、標準の対応が丁寧なものであり、顧客に対してはそれ以上の感謝の気持ちを持って対応するということです。
例えば、かつての顧客で、今現在の商品やサービスが不満だという方に対して、どういう対応をすべきでしょうか。丁寧に対応するのはもちろんですが、商品に反映されない限り、不満は続きます。
あるいはとてもファンだと表明していても、購入や利用歴が、どう推測してもなさそうな人だって少なくありません。意見を言ってくれる、要望を出してくれる人が、その通りにしたとしても利用者/顧客になってくれるわけではありません。

またリツイートや引用などをしてくれる人はありがたいですし、大切にすべきですが、フォロワー数は大きく異なります。1対1であり、同時に1対多でもありますが、フォロワー数が2万人に達する人だっています。どういう人が、どういう内容で、どう反応してくれたか。そこまで見極めながら運営すべきです。バイラルを狙うのは、これがポイントです。もし影響力の強い人たちを捉えずに、大きなバズを狙うのであれば、炎上マーケティングしかないのではないでしょうか。


実際には、ここまでするのには反射神経的なスピードの速さも求められまし、かなり属人的なスキルといえるでしょう。。マニュアル化することが難しいですが、ソーシャルの運営では、必要条件だと考えています。




【9.お客さま相談室的な側面】


ネット企業では、ユーザーサポートをメールに限定し、しかも何を問い合わせてもテンプレートのコピペ的な文章を送ってくるという声をよく聞きます。個別対応をしないことで、コストを抑制する。弱みを見せないことで、訴訟を回避するという戦術だと思われます。ソーシャルでも、これと同じことをしている企業アカウントが少なくありません。何を聞いても同じことの繰り返し。でもそれなら、コミュニケーションを取らずに、一方的な情報発信に徹した方がマシです。ソーシャルメディアを、郵便で送るDMと同じように使うわけです。ただこれは、有効なリストを揃えているわけでもないので、あまりに稚拙です。


私は経験的に(とても短いですが)、サポート的な対応を求めて来る人のほぼすべてが、解決すると強力なインフルエンサーになってくれます。もちろん影響力の大きさはさまざまですが、積極的に拡散してくれたり、ソーシャルグラフの中で薦めてくれています。サポートしたことで、その人が今度はサポーターになってくれる。ファンという、曖昧な存在よりも、はるかに心強い味方です。




【10.クレームへの対応】


また親しまれると親しまれるほど、気軽に強い調子でのクレームが来ることがあります。クレーマー的なケースもありますし、ソーシャルで対応が不可能な内容もありますが、それ以外の場合は、対応した方がいい。批判的な内容からクレーマーだと判断しがちですが、実際には熱心なファンで、こちらの落ち度を指摘してくれただけというケースもあります。例えば製品の中に説明書などのアイテムが足りなかったとか、サービス内容の問題を伝えたかった。それが特にTwitterは文字数が限定されますので、詳しく説明できず、怒りがメインに見えてしまうと考えられます。

そういう場合に紋切り型の、テンプレートのおうむ返しをしていると、まっとうな指摘をしてくれた人がクレーマー化してしまうことが少なくないのではないでしょうか。そうなると、負のインフルエンサーになってしまいます。
恐れずに、同じように丁寧に対応することで、半数ぐらいはサポーターになってくれます。
それにソーシャルでは、負の情報の方が面白い。丁寧に対応していないと、すぐに拡散しますし、反応が少なくても、大勢からじっと見られています。




Tweet Up



【11.見られていることを意識する】

【6.反応こそ、すべて】と書きましたが、ソーシャルでは自分では何も発信しない、 返信や共有などもせず、いわゆるROM専的な人が圧倒的に多いです。反応がなければ対応しようがありません。こういう人たちをクラスター、クラスタとして捉える考え方もありますが、やはり大雑把過ぎる推測でしかなく、あまり意味のあることだとは思えません。
突如として、今日買いましたとか、利用しましたという嬉しい反応があることもあります。客でもないのに、発言したくないという人も、けっこういらっしゃると考えた方がいいでしょう。
発信することがゼロという人は、絡まれるのが面倒。あるいは、批判されたりするのが怖いと考えている場合も多いでしょう。私も、個人的なソーシャル利用の体験では、リアルな知り合いから突如として、「何々について書かれてましたけど、あれは面白いですね」ということがけっこうあります。先日は、中学生から言われて狼狽えました(笑) ソーシャルグラフの中に入ってきてくれればまだしも、隠れてやっているし、入って行くのが抵抗あると言ってました。

話を元に戻すと、この圧倒的なボリュームの浮動票層。この観察者たちに、バイラルで届けて、好感を持ってもらい、購入や利用につなげないと成功はおぼつかないと言えるでしょう。
この層にアピールするには、どうしたらいいでしょう。アクセスログ等から最終的には売上しか指標になるものはありませんが、ソーシャルの効果だけで、イコール売上になるわけではありません。
「OPEN」な態度で、社会から好感を持たれる、いい関係を作っていくしかないでしょう。





【12.解析ツールに頼らない】

Facebookは話題にしている人や合計リーチを送ってきますし、有料の解析ツールは世の中に溢れています。確かに会議に出すのに数値化は便利ですが、どれだけ数値にしたところで、実質的には見える化/可視化ではないでしょう。まず数値化という発想自体が、やはりマスマーケティング。ざっくりとした数値は、傾向を見るのに便利ですが、悪い評判だって「話題にしている人」ですし、影響力にもカウントされます。ワードでポジティブ・ネガティブを判定するツールもあるようですが、それがどれだけ有効か、関心がおありなら、それぞれのソーシャルメディア内で検索してみてください。ワードではなく、文脈で捉えるような解析は、まだないのではないでしょうか。

そんな暇があるなら、ヴァーチャルな接客に労力を割いた方が有益でしょう。リーチがマイナスになると何かしなきゃいけないと、気が焦る。そこで最初に書いたように「壊れたふりをして」雑談に走ってしまうという悪循環に陥ったり、ただただ面白みのない同じ宣伝文を繰り返し発信し続けるというケースが多いように思えます。
もし、一方的な発信で受け入れてもらえる、話題にしてもらえるようにしたいなら、新商品をどんどん出し続けたり、新しいキャンペーンを次々に繰り出すしかないでしょう。それよりは、ソーシャルでいい関係を作ることの方が、はるかに安上がりです。



次回は、まとめです。

2012年9月25日火曜日

ソーシャルの仕掛け方_2

ソーシャルの仕掛け方_1より続く


ソーシャルメディアでは、まず共感が必要だということが常識のように語られています。1年ぐらいかけてユーザーとの関係性を高めていくのならともかく、企業のアカウントでどれだけ共感してもらえることが可能でしょうか。
もちろん、語られている「共感」というのは、面白いね!とか、いいね!というぐらいのことでしょうから、実際はかなり軽い共鳴みたいなものだと思います。それでもその共鳴は、製品やサービス、あるいはお店に対してのものでなければ意味がないでしょう。
企業アカウントが面白い人ねというキャラクターとしての評価を得ても、目的にはかなり遠いような気がします。Twitterで@NHK_PRが面白いと言われたりしますが、それはNHKだから意味あること。よく外食産業で、完全に動物もののキャラとしてツイートされているのを見かけますが、これは遠い。売りに結びつくには手間がかかりすぎで、遠回りすぎるような気がします。




ある個人のツイートで、興味深いものを見つけました。
「多くの企業アカが壊れたキャラを演じながら、目的を隠して仲良くしてくださいと迫ってくるのは、かなり奇妙」みたいな内容でした。
そりゃあ買ってください。発売しました、だけじゃ困りますけど、バランスですよね。

と、能書きはそれぐらいにしておいて、Twitterをメインに、FacebookやGoogle+にも多少ふれつつ、実際にやったことを、整理しながら書いていきたいと思います。




this is social networking?

                                

【1.場をあたためる】


テレビのバラエティ番組で、前説といわれる行為があります。まだテレビに出ることが出来ないお笑い芸人が、本番前にトークなどで、会場をアイドリングにすることです。

ソーシャルでもそれは同じで、毎日、毎回のように前説から入ることが必要だと思っています。あたためから入って、後はストーリーを持って、それぞれのツイートがつながっていることが多くの人に受け入れてもらえる条件でしょう。

完全に認知され、何人もから気軽にコミュニケートしてもらえる状態になれば、毎日は必要ありませんが、それはいわばスター扱いの状態。影響力を測定するサービスで解析すれば、「1000人にひとりの影響者」レベル以上の存在でしょう。

FacebookやGoogle+では、そもそも場が形成されている感じはないというか、いいね!や+1ぐらいのことなら、アイドリング状態にする必要はないでしょう。ただ、1つの投稿をする時に、導入部のテキストが伝えたいことではなくて、あたためる役割を持っていないと、企業ページでは事務的な感じか、押し付けがましい印象になってしまいます。



【2.臨場感を共有する】

今ではすっかり見かけなくなりましたが、Twitterといえば「〜なう!」でした。今、どこにいる。今、何してる。今、何を思った。ということを伝えるプラットフォームでした。これは現在もそんなに変わらない。

企業アカウントが、自分の都合で広報したいことを、自分のタイミングでツイートしていていいでしょうか。よほどおトクな情報ならともかく、そんなやり方で共感までしてもらおうなんて、ただの妄想です。

うちでは、こんなことをやりました。イベント前から人を行かせて、現場の様子を撮影。メールに現在の状況も書かせて送らせる。それを社内で加工して、次々にツイート。たぶん、現実の進行とTwitterでのタイムラグは10分程度。FacebookやGoogle+では、2時間程度でした。
もちろん現地から発信するということも考えられますが、写真には大勢の人が映っていますので、プライバシーに配慮した修正が必要です。USTREAMなどの放送では、その点をクリアすることが難しいでしょう。
この時のTwitterでは、2時間半ほどの疑似実況中継。現場の盛り上がり、興奮を、気軽に、伝染するように伝えられた。FacebookやGoogle+で後からご覧になっても、臨場感を感じてもらうことができたと思います。



【3.シズル感のある写真を多用する】

ソーシャルメディアでの一番の武器はテキストだという意見が多いですが、写真の方がはるかに訴求力がありそうです。

シズル感はなにも食品だけではなく、音や匂いや動きなどがリアルに伝わってきそうな写真なら、人物だって家電だって建築物だって何にだって通用するポイントだと思います。ただ印刷物に使用する写真とは、解像度だけではなく、ちょっと質が違うかもしれません。そういう画像を豊富に用意し、オーディエンスの反応を見ながら、撮影方法などを修正していくことが大事だと思います。
もちろん、準備できるのであれば、動画でもいいと思います。Google+は直接アップするのもYoutubeのリンクでも、大きく表示されるので効果的です。Twitterでも、Youtubeのリンクであれば有効ではないでしょうか。

うちではそれぞれのソーシャルメディアに合わせて、画像のサイズはもちろん、加工方法も変えて、投稿しました。ウェブサイトや印刷物に使うオフィシャルな画像以外にも、裏側を垣間見せるようなシチュエーションを撮影し、“シズル感”だけではなく、興味を深めてもらえるような仕掛けを考えました。
 



【4.確実に伝える】

実質的にはひまつぶしツールとして、利用されることの多いソーシャルメディア。その中で企業メッセージを伝え、ファンになってもらう、ブランドチェンジをしてもらう、購入行動を起こしてもらうなどなどの結果を出すには、まず届かなきゃ意味がない。


フェイスブックはそれほど刹那的に利用されているわけではないけれども、それでも投稿されてから1日たってしまうと、インサイドによれば見てもらえる確率は極端に低下するようです。たぶんGoogle+も同じようなものでしょう。
Twitterではピークは、せいぜい30分まで。リプライなどの反応ということでは、1日たってもあることはありますが、1時間もすると、ほとんどの人のタイムラインのファーストビューから外れてしまうと考えていいのではないでしょうか。

フォロワーが10万人いて、1日の中で、同じことをなんどもつぶやいたとしても、どれだけの人にも届くでしょうか。フォロワーの内訳は感覚的に、1割は競合や関連業界のチェック。3割は広い意味でのファン。2割は現実的な意味で顧客になる可能性がある人。2割が顧客。あと1割は、不明です(笑)
仮にこの見方が妥当だとして、10万人のフォロワーで購入や利用という結果に結びつく可能性があるのは、7万人。この中で毎日1時間弱でもTwitterを利用している人がどれだけいるでしょう。たぶん、半分もいない。また仮に3万人として、このうちつぶやいたツイートに出会ってくれるのは、いったい何人でしょう。たぶん、どう考えても、まったく足りない数字です。だからこそ、まず1日の中で同じことを表現を変えてツイートする必要がありますし、それを日々繰り返すことが必要でしょう。バイラルを狙うのは、その後です。




iPad & wireless key (快適ツイートセット)




【5.波を作る】

ということは、大量のツイートが必要です。実際イベントの当日前後2日半ぐらいは、1日に80本ぐらいの単独ツイート。200ぐらいのリプライ。30程度のリツイートをしました。一日に17時間ほど貼り付いていましたし、めちゃくちゃです(笑)

もちろん、こんなことをしたのは、この時だけ。【2.臨場感を共有する】で書いたことに追加すると、こちらに熱がなければ臨場感は伝わりません。また、ここをピークにして、注目度や存在感を上げることが必要ですし、フォローしてくれる人を爆発的に増やすことも出来ません。

ただ問題は、ここまでするとフォローしてくれている人のタイムラインを埋めてしまうことが多くなってくるので、リムーブされてしまうことも考える必要があります。ここをどう判断したかは後述しますが、10人程度しかフォローしていない人なら、TLは確実に埋まります。でも1000人フォローしている人なら埋まってしまうということは、まずないでしょう。またリプライの時に、先頭に相手の@を持ってくれば、その人のTLにしか表示されません。こういう配慮も混在させて、フォロワーのTLにどう表示されているかを想像しながら運営していく必要があります。

ピークが終わったあとは、通常は、毎日10数本の単独ツイートで、30ぐらいのリプライ、リツイートは状況に応じてという風にすれば、嫌がられずに興味を持続してもらえるのではないでしょうか。ダメなのは、いつもいる。あるいは定時にしかいないと思われてしまうことだと思います。
1日のうちでも1、2分で連投したりするんじゃないけれども、集中して対応するとき。まったく離れるときをつくりながら、できるだけ多くの人に伝えることが肝心です。






【6.反応こそ、すべて】

Facebookで「いいね!」の数、ましてや何人が見ましたというのは、単なる反応みたいなものなので、傾向としては参考になっても、あまり意味のあることだとは考えにくいと思います。もちろん、投稿内容を変えていく指標としては大切です。
ただ友だちが何に「いいね!」しているか気にしてチェックしている人もいるでしょうけど、慣れてきた多くの人にとっては「どうでもいいね!」に近いのではないでしょうか。
ところがコメントされると、注目度は、さらにあがりそうですし、仕掛ける側にとっても参考になります。どう好きなのか。なにが不満なのかが理解できます。

Twitterでも、リツイートは「いいね!」よりは積極的な好意だと考えられますし、バイラルとしてはとても貴重。そして、より積極的な好意や共感となると、はるかにリプライが重要になるのは言うまでもありませんし、会話することで、より好意が深まります。
リプライは[つながり]でチェックすることができますが、ただ企業アカウントに話しかけてきてくれるのは、強く好意を持ってくれているか、そこまでではなくても比較的丁寧な内容になっていることが多い。
もっと飾らない意見を知るには、社名やブランド名で検索し、赤裸々なツイートを読むことです。リプライ以上に本心からの好意的なツイートが多くて驚くこともありますが、批判もストレートに書かれています。マーケティング的にも、検索でのツイートを重要視すべきでしょう。
私は、前に書いてあるイベントの前後、検索してスパム化している、などの意見が2件以上出てきたら、そのタイミングでツイートをフェイドアウトするようにしました。



ソーシャルメディアの仕掛け方_3に続く


photo: flickrskampy,Mekkjp

2012年9月13日木曜日

見えているところ。見ていること。

私は近視なんですが、メガネやコンタクトをつけていると困ったことがおきます。老眼が始まっているから、近いところが見づらい。
裸眼でなら楽に読めるものに、ピントが合わなかったりします。ピントが無段階で合うんじゃなくて、合う範囲が飛び飛びに存在してるんですね(笑)

この前も、撮影の準備で手が汚れる作業をしていました。終わって、手を念入りに洗いました。ところが家に帰って、コンタクトを外してビックリ。爪の間に、汚れがけっこうあったんです。こんなに汚れがあるまま、コーヒーを飲んだり、いろいろしていたなんて。ピントの合う距離で見え方が、まったく違うんですね。自分の実感では、ピントというより解像度が違うような印象で。


ある上場企業では、投資家向けのパンフレットの文字が異様に大きい。なぜかというと、社長が監修されているから。ご自分の読める大きさが基準になっているんでしょう。でも世の中に、そんな文字の大きさ印刷物は、ちょっと見当たりません。

またある会社の社長からは、うちの出したデザインの文字が「小さ過ぎる。優しくない」と言われてしまいました。でも、あんまり文字を大きくすると、文字ばっかりの印象になってしまうんですが。それだったら、文章を簡潔にして、文章量を減らした方がいいんですよね。このへんの本 脳が人間の行動を支配する? にも書かれていますが、ギッシリ詰まってると、読む気を削いでしまう。あ、それはこのブログも一緒ですが(笑)

文字が大きいから読みやすい、読んでくれる、ということではないんですよね。小説を考えればそうですけど読もうと思っている人なら、どれだけ文字がぎっしりと詰まっていても読んでくれる。だけど積極的な興味がなく、なんとなく眺めているだけなら、どれだけ文字が大きくても目に入って来ない、はず。
考え方としては、どういう目的で、どういうイメージにしたいかを優先すべきで。女性誌が写真や文字でぎっしり詰まったものが多いのは、その方がお得感や勢いを感じさせることが出来るから。ではないでしょうか。



東洋経済Onlineに、興味深い記事が出ていました。こういうサービスの告知でした。

多くの情報に埋没してはいないか。注目してほしいところは見られているのか。デザインの狙いは届いているのか――。経験則に照らし合わせた仮説はあっても、実際に検証するのはなかなか骨が折れる。
これをネット上で簡単に測定・可視化できるというのが、住友スリーエムの「3M視線予測サービス」。人があるものを見たときに、最初の数秒間の視線の動きを瞬時に予測してレポートを提供する。

『デザインの見え方を可視化、住友3Mの新サービスに熱視線』


紹介するYoutube動画もあります。



人間は人種や性別、年齢などに関係なく、色や文字、顔、カタチ、明暗といった要素から、パッと見たデザインのどこに注目するか、どういう順番で目を移らせていくかなど、だいたい同じような傾向を示す。
これを人間工学と認知心理学の観点から分析するのが「ビジョン・サイエンス」と呼ぶ考え方。



同じような傾向って、本当でしょうか。人間や動物の目とか視線に反応すると言われたりしますが、それはプリミティブなサインを読むという本能的なものがあるでしょうから、納得度は高いです。ただ、それ以外になると、あくまで視線が行くとか注視するというのは、相対的なもの。
そもそも印刷物なり、パッケージなり、ウェブサイトなりを見ている見られているという前提で、分析されているわけですが、見てもらえるところまで行くのが、まず大変なわけです。見てもらえても、一瞬で「興味がない」と判断され、離れられてしまうケースの方が多いでしょうし。


似たような手法で、長年、アイトラッキング調査が活用されていますが、これも、例えばチラシをモニターで見せるという不自然な状況で実施されたりします。ウェブサイトでは、ほとんどの視線の移動や集中がファーストビューで起こるという、計測しなくても誰だって予想できる結果だったりします。
だからといって、アイトラッキングが意味のないものかというと、そんなことはありません。むしろ、見せたいところなのに見られていない箇所を明らかにして改善するとか、視線が集中しているのにクリックされないバナーなど改善することに役立っているのだと思います。

もしかすると、ビジョン・サイエンスもそういう使い方が有効なのかもしれないですね。

2012年9月10日月曜日

ソーシャルの仕掛け方_1

ソーシャルメディアの運用について、いろいろ提案することはありますけど、“中の人”まで請け負ったことはありませんでした。
提案をしてたら、じゃあ運用からやってくれと言われてしまい、内心焦りながらも、お引き受けしました。いつも制作会社という立場ながら、マーケティング的なことを喋っています。
こうやれば、こういう効果が出るはずだと提案をしているのですが、ことソーシャルマーケティングに関しては、その運用によって大きな差がついてしまうのは間違いありません。そのクライアントでは大手の会社が“中の人”まで請け負っていたのですが、遅い、ユーザーとのコミュニケーションが悪い、というところが最大の問題だったようです。
そりゃあ、理解出来る話です。“中の人”は、本当に中の人がやるのが原則。ソーシャルの運営は、宣伝・PRだけではなく、ユーザーサポートやお客さま相談室的な役割も求められます。
それぐらいの覚悟と、隣りに座ってるぐらいの意思の疎通がないと出来ない。というのが、外の人が中の人を請け負うことではないでしょうか。少なくとも、何かあれば、休日であっても担当者にケータイで電話できる、メールできるという関係も事前に作っておく必要があります。






詳しくは書けませんが、それなりに知られているブランドで、B to Cで、ECサイトではなく、実店舗への誘導が目的。うちが請け負って3週間後に、大きなイベントがあり、そこへの集客がまず最初のハードルです。
※うちがやらせていただく直前で、Twitterでは数千人のフォロアーが。Facebookでは1つの投稿につき、リーチで1000人程度、話題にしている人数で100人程度だということがインサイドに出ていました。

じゃあ具体的に、どう運営するか。当初、社内で分担しようと思ったのですが、とにかく時間がない。3週間で結果を出そうと思ったら、分担するより、自分がやってしまうのが一番いいだろうと。もちろん、通常の業務をやりながらだから危険なのは危険。
でも瞬間的に判断して返すんだから、そういうことに慣れていることが必要だし、短い期間でも蓄積することで経験値があがり、より上手に対応できるはず。そう考えて、ひとりでやることにしました。
※現在では、ある程度マニュアル化して分担しています。


結果は、ソーシャルからの誘導のすべてを数値化されるわけではありませんが、イベント時の集客という点では大成功だったと考えています。ソーシャルで発信する/コミュニケーションするということは、他の手段より圧倒的にコストパフォーマ数が高い。また、リスティング広告などの比ではないですし。


ソーシャルからの誘導がどれだけあったのかは数値化できませんが、今回はソーシャルと純粋なパブリシティでしか訴求していませんでした。

ソーシャル上の数字としては、3週間でTwitterのフォロワーが1万人を突破し、TOYOTAの広報アカウントに迫る人数へ。Facebookではリーチで4000人強までいき、話題にしている人が300数十人にまでなっています。
ただこれらの数字は、指標としてあまり役立つものではないと考えています。必要なのは、どれだけ拡散したかと、どれだけ行動を促したかということ。参考になるのは、Twitterなら、どれだけRTやリツイートされたか、お気に入りに登録してもらえたかです。ほぼ三週間目の時点では、何をツイートしても、20人以上からRTやリツイートをしてもらえるようになり、10人以上にお気に入りに登録してもらえるようになりました。





ECサイトなら効果があるが、特定の実店舗への誘導で、どれだけの効果があるのか。全国、全世界に発信しても意味がない。ましてやソーシャル上で、アクティブな人がどれだけいるのか。とてもマスではないという議論がありますが、そもそもソーシャル上で活動していなければ、存在していないのと一緒です。
エリア内の人たちに訴求しようとすれば、新聞折り込みやポスティング、ビルボードカーなどが考えられますが、いずれもプッシュ型で、訴求する年齢層が限られたり、あるいはターゲットになりえない人たちにも訴求してしまい、コストもパフォーマンスもいいとはいえません。



ところで、ソーシャルメディアの登録者数って、どのくらいなんでしょうか。Facebookでは広告を出稿する前提で調べると、この6月に登録者数が1000万人を突破したようです。


ブログメディア「in the looop」より

視聴者数ということであれば、上の図のようなニールセンによるインターネット利用動向調査があります。でもこれが穴だらけで、リンク先によれば


  1. フィーチャーフォンやスマートフォンからの訪問者数を含んでいない。
  2. 非会員の訪問、すなわち各SNSトップページへの訪問者やオープンなページ(Facebookページ、mixiページ)への訪問者を含んでいる。したがってアクティブ会員数とは一致しない。
  3. PCはWindows PCのみであり、MACやタブレットPCなどは含まない。
  4. 視聴率測定しているのは家庭と職場のみであり、学校やネットカフェなどからのインターネット利用は含まれていない。


ということですので、あくまで目安にしかなりません。それでもFacebookが登録者数で1000万人だとすれば、Twitterでも近いレベルの人数だと考えて差し支えないように思います。各ソーシャルメディアの登録者が重なっていたとしても、ほとんどマスと考えていい数字です。


ではユーザー層をどう考えればいいでしょうか。
こんな面白い言い方がありましたので、引用します。



mixi、LINE = ロードサイド
mixiとLINEは郊外の幹線道路沿いにショッピングセンターのような存在で、みんながなんとなく集まってくる場所。
Twitter = 情報受信なう
Twitterは、情報発信というよりも実は人のツイートを見て情報を受信しているという側面のほうが強い。
Facebook = オヤジの新タバコ部屋
Facebookは、当初は20代、30代が主流だったが、今は50代前後の部長クラスも使うようになってきて、部下のほうが嫌がっている状態。
アメーバ = 109へようこそ
アメーバはとにかく10代の利用者が多い。
Blog = ウェブ論壇
ブログなどでは、自説を主張するような人が多い。
Social Media Experience」より


Facebookが「オヤジの新タバコ部屋」というのは言い得て妙。私は、35歳ぐらいから団塊の世代ぐらいまでの中高年層で、よりアクティブなのはアラフォーの男女なのではという気がしています。いいね!というのが簡単な分だけ、アクティブに思えますが、積極的に投稿やコメントしているのは、中年男性という印象が強いです。

Twitterも情報受信主体でしょう。実際に周囲でも、情報収集のためという人が少なくありません。フォローしてタイムラインを眺めているだけで、情報通になった気がします。つぶやくなら、他愛もない内容じゃないと、リツイートされたりRTで意見されたりすることを怖がっているようにも見えます。年齢層的には20歳前後から50代真ん中ぐらいで、よりアクティブなのは、20歳から40歳ぐらいなのではと想像しています。

Blogはとにかく自己主張が強い。などなど、様々なことを考えたりしますが、前述の通りソーシャルのユーザー全般について、考察したり、詳しく調査・分析したってしょうがないと思っています。もっとも重要なのは、反応。反応してくれた人がどういう人で、どういう反応をしてくれたか。どういう風に拡散されたかを知ることが大切だと思います。

年齢性別や属性から広告を表示しているはずのFBなどを見ていると、いかに的外れか。最先端を行っているはずのAmazonのリコメンドが、どれだけ稚拙か。科学的分析にもとづくターゲティングが、どれだけ効果をあげているか。現実問題として、かなり疑問があります。
ユーザー層は、参考程度にざっくりと把握することは必要。でもFBで出したクーポンが、一向に使われない。使用率が低過ぎるなんていう話は、よくあります。ソーシャルでは得する情報が好まれると言われますが、それは反応するハードルが低いだけ。そこは反応の中身をちゃんと見ないと意味がないんじゃないのと考えています。



次回は、具体的にどういうことをやったのかを書いていこうと思います。
あくまで短期的な効果を考えてのことですし、ECサイトではないという前提ですが。



「ソーシャルの仕掛け方_2」に続く。