2012年8月20日月曜日

脳が人間の行動を支配する? 


マーケティングに脳科学を取り入れたという「ニューロマーケティング」が、流行りつつある。いや、本当はどれだけ採用されているのか、知らないです。

当社のクライアントでも、ニューロマーケティングを取り入れられているところもありますし、近いジャンルのサービスを提供している企業もあります。関連の本も注目されるようになっているようですが、だからって普及しているのかどうかまでは、なんとも。
ただ“効果の曖昧な広告”ではなく、ITテクノロジーを駆使し“成果に応じた販促費用”へというより確実で、よりコスパの高いアプローチを求めるという要望が強くなっていることと同様に、脳科学を使って、確実性の高いマーケティングを行いたいと考える企業が増えていても、不思議ではありません。


                 newsweekjapanから


脳科学の話題の中でも、もっとも盛り上がっているのが「ミラーニューロン」でしょう。ミラーニューロンについて、Wikipediaから引用すると、
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ミラーニューロンは霊長類などの高等動物の脳内で、自ら行動するときと、他の個体が行動するのを見ている状態の、両方で活動電位を発生させる神経細胞である。他の個体の行動を見て、まるで自身が同じ行動をとっているかのように"鏡"のような反応をすることから名付けられた。他人がしていることを見て、我がことのように感じる共感(エンパシー)能力を司っていると考えられている。 
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とあります。

ミラーニューロンで検索すると、もう学習からモテから、ミラーニューロンを使ってどうのというブログが数多くあります。ミラーニューロンを使うと、なんだって、簡単に出来そうです(笑)


ミラーニューロンについて書籍では、そのまんま『ミラーニューロン』という、やたらと難しい本があります。ミラーニューロンの発見は、DNAの螺旋の発見にも等しいというような言われ方をされたりしますが、この本を読む限り、機能を明確に解き明かしてるわけでもなさそうです。
















動作を模倣してしまうというだけなら、マジシャンや武道家が経験的に知っていることですし、意図を模倣してしまうということなら、演劇の世界の人たちが駆使していることでしょう。
この本では、こんな実験の話が出てきます。古典舞踏家とカポエイラの教師、これまで一度も踊りのレッスンを受けたことない人たち3グループに、古典舞踏の映像とカポエイラの映像を見せた。古典舞踏家は古典舞踏の映像のステップに。カポエイラの教師はカポエイラ映像のステップに他の集団よりも強く反応したそうです。直感的に、そんなの当然だろうよと思ってしまうのですが、ということはミラーニューロンそのものの本来の働きと考えるより、個々人の後天的な習慣や興味によって、反応する回路が出来上がっている。ミラーニューロンが発火したから、ミラーリングが起こっていると考えるのは、ちょっと無理があるのではないでしょうか。





こんな本もあります。「なぜ気持ちいいのか、なぜやめられないのか」という報酬系について語った『快感回路』という本です。これも分子レベルや基本的な脳の構造についても語られていて、やたらと難しいです。















人間は、セックスとか食事とか、種の保存のために快を仕込まれてる。でもそれだけじゃなくドラッグ、アルコール、高カロリー食、ギャンブル、お金儲け、エクササイズ、慈善行為に至るまで、同じように快感回路が作動し、ドーパミンなどの快楽物質が分泌される。それがある一線を越えてしまうと、「依存症」になってしまうと書かれています。読んでいると、これらを『快感回路』というネーミングにしたのもうなづけます。

ただ結論的に「経験により脳内の快感回路を長期的に変化させる能力のおかげで、人間は様々なものを自由に報酬と感じることができ、抽象的観念さえも快いものにできる。人間の行動や文化の多くはこの現象に依存している。しかし残念なことに、その同じプロセスが快感を依存症へと変化させてしまうのである」なんて書いてあります。ああ、なんだ。やっぱり後天的なのね、と思ってしまいます。




それじゃあ、ストレートに「ニューロマーケティング」について、語っている書籍はどうか。
『マーケターの知らない「95%」』という、世界有数のニューロマーケティング会社のCEOが、自社での研究成果をベースに、書かれた本があります。















読み進むと、アップル社のデザインが、最も効果的であるというような結果が出てきます。あれ、ニューロン的にはランディングページのような繰り返し繰り返し催眠的にメッセージするより、引き算のデザインの方がいいんだ。なんだ。ネット以前のデザイン論と違わないじゃん、とちょっと驚きます。高齢者には、悲観的な要素より、楽観的な未来を語る方が共感を得られやすいとか。女性向けのマーケティングでは、必ず情緒に訴える要素を入れる。などなど、どうも従来のマーケティングと、どこが違うんだろうという気がしてきます。デモグラフィックな分類で済んでしまうなら、なおさら。



人はモノを選んだ理由や買った動機を尋ねられると、後づけで合理的な理由をつけてしまいます。だからマーケティング・リサーチが、よりインサイトへと入って行くことは、必然的な流れなんでしょう。



だけどマーケティング全体ということになると、どうなんでしょうか。今の段階では、経験則的なセオリーで十分に通用しそうな気がします。ニューロマーケティングが科学的ではないと言いたいのではなく、わざわざ電極付けて調べるほどのことなんだろうか、というのが現状ではないでしょうか。普遍的ではなく、後天的に個人差があるということなんですから、ターゲット層だって、仮説から作る必要があるでしょうし。
ただ、回路を作ったり、発火させたりするという発想は、プロダクトそのものにもクリエイティブにも応用出来る面白い視点ではないかと思います。


回路を作る、発火させる。まるでネットの世界の話みたいですね。
あ、もしかしたら、ネットを使ったコミュニケーションも、ニューロンとして考えると面白いかもしれません。



2012年8月9日木曜日

パンダアップデートって、何?

知り合いから「パンダアップデート」って、どんなものか聞かれました。ウェブとかIT関連の業種でも職種でもない人なので、どう説明したらいいか。
それよりも、そんな人がどうして「パンダアップデート」を知っているのか不思議で。聞いてみたら、うちの作った動画を見てくれたと(笑)

いやもう、そしたらこの動画に出てることが、すべてだと思うんですが。




「パンダアップデート」の影響や対策を詳細に語る方は大勢いらっしゃいますけど、サイト運営をしながらトライ&エラーしないと、本当のところはまだまだ分からないでしょう。
それよりもこれまでのSEO対策という対策の部分が、これからはほとんど役に立たないというか。もしかしたら、マイナスになるかもしれませんし。

Googleだって、検索した人が「なんだよこれ。こんなのが上位に入ってるなんて、検索なんて適当なもんだ。役に立たねぇじゃないの」と思われてる状況が続くとマズいと思ってるわけで。まるでコンシェルジュとかアドバイザーとか、キーワードの中身に精通した信頼出来る人間が案内してくれているような検索結果にしたいと考えているでしょう。
コンサルタントを名乗っている会社は、ほとんど対策というテクニックを語っていたわけです。考えてみればテクニックで順位が上がるという現象自体、Googleにしてみれば避けたいはずです。
ユーザーにとって、有益なサイトが上位に位置する。これこそが目標だし、得たい評判。

とすると、サイトを作ったり運営したりする側は、何を考えればいいか。
私に聞いてきた人は、「要は、オリジナリティがあればいいのね」とたずねます。まあ、たぶんそう。どれだけ入れ込んで作っているか、愛情を持って運営しているかがポイントで。


例えば、テキストの中のキーワードの出現頻度はどうなのか。さあ、正直なところ私には分からないです。このブログも書きはじめると、軽いマーケティングもののネタが増えて来ました。でも「マーケティング」というワードは、まったく使ってないと言っていいほど。
そんなんじゃあ10年やっても、「マーケティング」で検索したって上位には行かないんじゃんと言われそうです。だけど「マーケティング」なんていうビッグワードで検索されたいかどうかというと、まったく思ってはいないんです。
仮にECサイトで、ビッグワードで上位に表示させたいなんてことになると大変です。その分だけアクセスしてくれて10万人が来て100人が買ってくれればいいと考えるか、それとも1000人が訪れて100人が購入してくれればいいと考えるか。前者の戦術は国際的に競争しているブランドでしか採用出来ないし、検索うんぬんのレベルではないと思います。後者なら、プロダクトやサイトへの愛しかないでしょう。




2012年8月7日火曜日

行列までして、買ってくれる理由

今朝、出勤時にタワーレコード渋谷の前を通りがかったら、とんでもない行列ができてた。山手線の下をくぐって、明治通りまで続いてて、その先まで並んでそうだ。
もう並んでる人たちを見ると、どんなアーティストが目当てなのか、だいたいわかる。今日は韓流アイドルだろうなと思ったら、やっぱりそうだった。並んでいるのは、一般的な中年の女性。アラフォーぐらいが中心だけど、特に外見からはイベント感はないというか、スーパーのレジに並んでても違和感がない。同じ韓流でもアーティストが違うと、気合いの入った黒レースの集団が集結している時もあった。
11時ぐらいに出掛けた時も、まだずら〜っと並んで店頭で何か買ってた。

調べてはいないけど、たいがいCDに何かしらおまけが付いてるとかぐらい。それだけでも、これだけの人たちが猛暑の中、朝から並ぶ。その理由って、どういうことなんだろう。



先日はQ-FRONTのツタヤが開店前、店頭でドラクエの販売準備みたいなことをしていた。へ〜、ドラクエも最近は並ばないんだと思ったら、まったくのハズレで、店内でカウントダウンイベントをしていたとそうなんです。


これもゲームデザイナーやプロデューサーが登場して、買ってくれた人にはハイタッチしてくれたりするという。それでも平日の朝からツタヤに集まるというのは、どういうことなんだろう。

「ドラクエX」ついに発売--カウントダウンイベントを実施


タワーレコードに並ぶおばさんたちは、もしかしたら日常的な食料品とか、あるいは洋服だって、価格が購入決定の最大の要因なのかもしれない。
カウントダウンイベントに参加して、ドラクエXを買った人たちも、家電だったら、量販店でチェックして買いたい品番まで決めて、ネットで最安値を探して購入するかもしれない。

じゃあ、わざわざ出掛けて、並んで、定価で購入する理由は何って考えると、まずファンになっていること。そして、出掛けること自体にイベント性があること。あるいはオマケが付いてて付加価値があること。
当たり前過ぎるほど当たり前だけど、だけどリアルで売られている大半の商品は、そうなっていないんじゃないでしょうか。家電なら多機能やスペック、そして販売価格の勝負で、付加価値のある売り方はされていない気がする。飲料だって、トクホはともかく、新製品であるぐらいしかアピール出来る要素はないのかも。


あれ? そうするとファンになっているかどうかは、どこで? 
それはきっと、販売時点以前のところでコミュニケーションしてるんですよね。すでに大ブランドならともかく、新しい商品やサービスなら、間違いなくそう。新しいK-POPの売出し方って、たぶんそうじゃないですか。今日見たタワーレコードの行列、アーティスト名見ても、私は聞いたことなかったですから。そもそも、詳しくないですけど(笑)
でもどんな商品やサービスだって、私だけが知ってるというのが初期のファン作りには必要だし、そのあとも「私たちだけが知ってるコアな情報の共有」でつながることが必須なんだと思います。

今の飲料などの売り方は、販売時に広告も販促も最大風速になるようにして、店頭で売れなかったらすぐ引っ込めちゃう。とにかく数出して、当たるか当たらないかを判断する手法が、限界まできているような。間違ってファンになった人は、ツライですよね。
趣味のものと一緒にするのは違うだろという見方もあると思いますけど、いまや、ほとんどのものが趣味のもの。生活必需品以外は、ぜんぶ嗜好品と考えていいんじゃないでしょうか。



Wonder Girls 『黒沢かずこ(森三中)が「Nobody」を踊ってみた!』

K-POP最後の大物と言われるワンダーガールズ。アメリカや中国に進出して、それなりに日本でも知られていたりして。日本デビューは先月ということみたいなんですが。
育成したい人たちがコアなファンになるのだとすると、中途半端な認知度かもしれませんね。このCMから想像する売り方も、どうなんだこれは!! と、ツッコミたくなります(笑)




2012年8月2日木曜日

Facebookという誤解

先月末、アメリカでFacebookやグルーポンなどの株価が下落し、ソーシャルバブルが崩壊したのではという見方がある一方、いやいや広告事業は堅調だから、まだまだ期待できるとの判断がある。

ところが上場以前に、GMが広告効果が低いことを理由にFacebookでの大型キャンペーンを取りやめたとか、広告枠のクリック率は0.051%に過ぎないという報道もありました。

あたらしい話題では、おととい7月31日にFacebookは新しいマーケティング・ツールを発表。このツールを利用すればページ記事を年齢、性別、地域、言語その他特定の属性を持つファンのニュースフィードに掲載することができるというもの。これによって、ターゲティングが可能になり、企業はあらたなファン獲得のために今以上に広告料金を払うようになるかもしれない。なんていう見通しを書いているところがあります。

Facebookが強力なマーケティング・ツールを発表


こういうのを読んで、ますますどうなんだろうと思うのは、Facebookの広告売上が伸びるというだけのことで、ツールを使った企業の費用対効果が良くなるとか、そんな話ではないですよね。
それだけ細かなターゲティングを必要としていて、しかも使い分け可能なのは国際的な企業だったり、最低でもナショナルブランドじゃないかと思ったりするんですが、どうなんでしょう。いかに知名度が高くても、ローカルサービスなら、そもそもFacebookを使う必要があるかどうか。
年齢性別などのデモグラフィックな要素と、「いいね!」での興味の方向性を掛け合わせると、いったいどんなマーケティングができるんでしょうか。
コスメに「いいね!」したことない女性が、化粧品を買わないと判断するのは早計で、化粧品関連に「いいね!」しまくっているのは、業界関係者で社販で買っている人かもしれませんし。



先日、あるクライアントのところでウェブサービス大手の方が、「ブランドコミュニケーションのために、Facebookは欠かせない」とおっしゃってました。そりゃあユーザーやファンとコミュニケーションした方がいいですけど、FacebookにしてもTwitterにしても中の人たちがよほどの好き者じゃないと、発信オンリーになってしまいがち。ウェブマーケティングはコスパが高いなんてことも言われますが、中の人たちの人件費まで考えるとどうなんでしょうか。原発の発電コストは安い。でもトータルの費用を考えると、べらぼうに高いじゃないか、という構造と似ている気がします。




そんな難しい話は、ともかく。私も、あんまり理解できてませんし(笑)


そのクライアントは、Facebookでクーポンを発行して何万人が取ってくれても、実際に使ってくれるのは、ごくわずかだと言います。そりゃあ、そうでしょう。グルーポンのように、半額設定するならまだしも。
得しそうなものなら、とりあえずもらっとけ。みたいなことがほとんどでしょう。これって、ブランドコミュニケーションでもないし、販促の導線にすらなってないです。

となると、ほとんどの企業にとって、Facebookなどのソーシャルメディアを使うのは、バイラルを考えた情報発信に徹するのが適切なのではと思ったりします。
難しく賢そうなことを言われると、ブームだし、その仕組みに乗っかっとけという行動が多過ぎるんじゃないかという気がします。バブルですね(笑)



ちなみにFB。私の周囲で利用している人で面白い反応は、ミュージシャンで「小学校や中学校の時の同級生から友だち申請が来る。こちらは憶えてもいないし、友だちになっても素でやってるわけじゃないから困る。メンバーみんな困って、ヤメようかと言ってる」なんていうのがあります。なんで、そんな個人情報を出すんだっていう(笑)
大なり小なり、多くの人がやってる失敗がこのパターン。個人的な楽しみのためならともかく、ビジネス的な目的のために使うなら、制御しないと。イギリスの不倫裁判に関するあるデータでは、訴状の33%がFacebookという単語を含む。アメリカでは、弁護士の8割以上が、SNSでの会話を離婚訴訟の証拠として使うケースが過去5年間で増加したと言っているそうです。



もっとも頻繁に使っている人たちは、友だちになるのは面識のある人だけとか、趣味の団体の仲間内でクローズドで使っているというもの。メールより、濃いコミュニケーションが出来るからということ。
個人の楽しみで使う方法としては、こういうのが無難じゃないかと思います。ただそうすると、企業のプロモーションとは接点が持ってもらいづらくなる。私たちも含めて、仕掛ける側は大変ですね。


と、Facebookの個人利用歴3日の私が書いてみました(笑)

Facebookをはじめたのは、必要にかられて。
基本的に企業ユースでオススメしているのは、まずTwitter、そしてSEOとGoogle+とYoutubeなんです。バイラルということでもSEOということでも、Facebookよりも優先順位は高いよ。と思ってます。