2013年5月30日木曜日

ダフトパンクの新譜を買うまでと、ソーシャルメディアの関係

先週金曜日、タワーレコード渋谷でダフトパンクの新譜『Random Access Memories』を買った。発売は22日の水曜日。もう発売日に買おうかというぐらい入れ込んでたけど、たいがい会社に9時頃までいるので、その後に立ち寄って買うのはなぁと思って、金曜日までガマンしてた。

24日金曜日の夜は、10時頃にタワーレコードに入って、11時の閉店のアナウンスを聞くまで、いろんなのを視聴してた。こんな時間の使い方は、さすがに金曜日にしかできない。
どうして1時間も視聴してたかというと、ダフトパンク以外になにかいいのはないかと探してたんです。売れ筋の新譜よりも、タワレコのレコメンドをちょこちょことチェックしたいという欲求。


2年ほど前までは、毎月2、3枚のCDを買っていた私。でももう、ぱったりと買わなくなった。昨年買ったのは、年間で4枚ほど。今年は3月に、デヴィッド・ボウイの10年ぶりの新作『ザ・ネクスト・デイ』を買っただけ。その理由はなんだと考えると、もう新しい音楽はないよなぁと思っているのと、買うのはファンであるアーティストのものだけ、応援消費的なこと以外ではお金を使いたくないという気持ち。

応援消費というモチベーション




いや、そう言い切るのはウソだわ(笑) 実際のところ、新しい音楽の情報を知らないんです。友だちはといえば、学生のころから好きだったのばかり聴いている。ストーンズとかジェフ・ベックとか。私もストーンズはずっと聴いてるけど、せめてベックぐらいは聴けよなと思うぐらいで、友だちルートから新しい情報が入って来ることは、皆無。
FMは日常的に聴いてるけど、そこから入って来るのも、そんなに多くない。だから2〜3ヵ月に1度ほど、タワレコで視聴するのがこのところのパターンだ。



2年ほど前に、5年ぐらいやっていたmixiをやめた。理由は足あと機能がなくなったから。
mixiではリアルなつながりではない人とつながれるから、とても良かった。タワーレコードでバイヤーをしていた人とマイミクになって、音楽関連の新しい情報は、かなりの部分、彼から入ってきてた。その人と仲良くなったのは、The Teddy Bearsというグループのデビューアルバムを私が持っていたこと。当時、日本での発売はなく、輸入版のみだった。

だいたい1週間に1度ほど日記を更新してて、日本未発売の曲のYoutube動画も貼付けられてた。オーストラリアの「CUT COPY」というバンドは、日記で教えてもらった。クラフトワークのツールドフランスという曲を「Hot Chip」がカバーしたシングルが出てるとか、「Simian Mobile Disco」の新譜が出たとか、もういろいろと。
クラブ/テクノ系の音楽が中心で、どれも知ってる人は多くない。マイナーなのばかりです。




ダフトパンクの話に戻します。
ダフトパンクもクラブ/テクノ系だけど、かなりメジャーな存在。メジャーな曲って、FMやYoutubeで見てればいいというのが、このところの私の発想だし、ファンでもない。ファンでもないのに、CDを買って持っておくという気持ちには、なかなかなれない。
それなのに、どうして私が『Random Access Memories』を買ったんでしょうか。


◯1stシングルの公開
4月中旬に、1stシングル「ゲット・ラッキー」を全世界で電撃公開。それ以降、FMでもガンガン流れてて驚いた。PVは複数あるけど、その1本。


Daft Punk - Get Lucky ft. Pharrell William


この曲、ファンクじゃないか。ディスコと言ってもいいと思うけど、ダフトパンクが、どうして!? という意外性。しかもこの曲は、ナイル・ロジャースが参加してるということだけど、ギターを本人が弾いてるじゃないの! 普通、この手のバンドが昔の音のニュアンスを求めた場合は、サンプリングするでしょう。
それに通常はリズム隊を打ち込みでやらない? デジタルビートじゃなくて、ドラムを叩いてるし、ナイル・ロジャースがカッティングギターやってるし。曲自体もとても好きですけど、そういう様々なオドロキ。

でも、でもこの段階では、CD買う気は0%(笑) この曲だけなら、Youtubeでいいし、iTunesで買うにしろ1曲だけでいい。


この記事を書くのに検索してたら、こんなのもあった。この「日本ダフト・パンク化計画」を知ってたら、買う気マイナス20%ですね(笑)


ダフト・パンク、最新シングルの日本独自ミュージック・ビデオが完成!/ Qetic.jp 



◯Twitterでの発見とGoogle+へのシェア 
5月14日、偶然、爆笑ツイートを発見。ぜったいにネタだろうと思って私もやってみたら、本当だった(笑)



そしたら以前から「ダフトパンク状態のおばさん」と表現していたとコメントをくれた人も。しかもこの投稿に影響され、すぐに「東京ダフトパンクス」を結成したという人があらわれた。なんだなんだ、それは。


Google+からの拡散 →ブログやYoutubeへ
ブログにリンクされ「祝・新作リリース!ワンコインでキミも今日からダフトパンク!」というタイトル。

なんとこの「東京ダフトパンクス」、1コイン(500円以内)で入会可能、入会基準なしの誰でもすぐその場の気分でダフトパンクスの仲間入りができるという便利なパンクだ。
と書いてある。しかも動画までアップされてる。これがもう、おかしくて(笑)


Tokyo Daft Punks


5月19日のアップだから、行動力がありますよね。
ここに至って、私の考えは、かなり変わりました。
ダフトパンクには好きな曲がけっこうあるのに、どうしてダフトパンクを好きじゃないんだろ。と分析してみると、あのビジュアルがたぶんキライなんだ。なんとなくオタクっぽさの漂う仮面が。
ダフトパンクが手がけた映画トロン・レガシーのサントラはカッコイイし、出演したシーンでは、フルフェイスの仮面が、ものすごくハマってたんだけど。
だけど、あのフルフェイスがカッコイイとかカッコ悪いとかじゃなくて、イジれるネタに変わってきて、モヤっていた抵抗感が一気に消えたんです。熟成というか、イジれる。派生して遊べる素材ができて。


ただ、この段階でもCD買う気は30%ぐらい。
よほどの偶然がないとスルーするレベル。世界中で、予約だけで初登場一位とかってことだから、そんなメジャーな音楽を買う気にはなかなかなれないんです。だって、FMでも流れますし、所有したいという欲求はあんまり。



◯Facebookからの展開 
STUDIO VOICEという雑誌のフェイスブックページにいいね!をしてて、ページフィールドに、こんな投稿が流れてきました。5月22日のことです。


「オマージュ、またはリスペクトした思いが反映したような」と書いてある。なんだろと思って、STUDIO VOICEへのリンクをクリックしました。
そしたら、このアルバムはさまざまなコラボレーターを起用しながら、進んで行く。辛うじてボコーダーの音だけが、彼らの仕事の痕跡を感じさせるような、そんな楽曲もある。と書いてあった。「ゲット・ラッキー」も最後の方のビートやボコーダーが、ダフトパンク感を出しているだけなのでで、ナイル・ロジャースの新譜と言われても信じてしまう。
しかしファレル・ウィリアムスやナイル・ロジャース以外に誰が参加しているんだろう。そしたら、ポール・ウィリアムズ(!)、ジョルジオ・モロダー(!!!)。
な、なんとジョルジオ・モロダーだと!? ブロンディやマドンナ、デビッド・ボウイをプロデュースしてきたナイル・ロジャースも凄いけど、私にとってはジョルジオ・モロダーは別格だ。現代音楽・実験音楽からの流れの電子音楽。かろうじてクラフトワークがイギリスやアメリカでヒットしたりしていても、小難しい風変わりなジャンルでしかなかった。それをジョルジオ・モロダーは、ドナ・サマーに提供した「I FEEL LOVE」で一躍ダンスミュージックにしてしまった。

ジョルジオ・モロダーまで参加してるなら、買うしかないじゃない。いったいダフトパンクは何をしようとしてるんだ! ともう、買う気まんまん。この段階で、一気に100%を突破した。




それ以外にも、ほぼ毎日タワーレコードの前を通っているから『Random Access Memories』の広告を見てたり、発売前後の1週間ほどはビルボードカーも見ました。

ただ広告は、ほとんど関係なく。どのSNSだからどうなったというのも、そんなに関係なくて、それぞれの展開がないと買わなかった気がします。
認知とか検索とか共有とかクロージングということじゃなくて、コンテンツの良さはもちろんですけど、サンバイザーの「おばさん  ダフトパンク」が買わない壁を崩してくれました。冗談みたいですけど(笑)

遊べるネタが、送り手側の仕掛けじゃなくて広がってる。世界中で大ヒットしているそうですから、私のような買い方や動機は、少数派だと思いますけど、だけど面白いなと思ったのは、ファンではない人に、どうやったら買ってもらえるかという仕組み。そこを考えるには、参考になるんじゃないかと感じました。
もちろん世界各国でNo.1になるには、ファンだけじゃ届かないわけで。今回の『Random Access Memories』は、ナイル・ロジャースやジョルジオ・モロダーが参加しているんだから、当然おっさん世代も取り込めるわけです。狙ってもらっては、いないのですが(笑)





2013年5月24日金曜日

行列までして、買ってくれる理由 -2

きのう朝、とんでもない行列を目撃した。渋谷のBEAMSを取り囲むようにして、行列が公園通りまで続いてる。見える範囲でざっくり想像すると、300人ぐらいは並んでるみたい。
遠目で並んでる人たちを見て、私は韓流スターの何かがあるの?と思った。その理由は、女性ばかりなのと年齢層。

会社でその行列の話をしていたら、ファッションを見ると年齢層はもっと若いですよという意見があって、私はそうかなぁと。着てるものじゃなくて集団なら姿勢で、だいたいの年齢層ってわかると思っている。そんなこと言ったら並んでた人たちに怒られそうですけど(笑) 20代でも姿勢はたいがい悪いけど、姿勢の善し悪しじゃなくて、特に女の人は20代後半からでも腹筋や背筋の衰えが顕著に出ているような気がする。

それに神南のこのエリアで、女性が並ぶというのは、セレクトショップ系ではちょっと考えられない。たいがいは若い男性が多いですから。




それで検索してみたら、BEAMSの横にある細長いビルは今年オープンしたばかりのチャン・グンソクさんの「Collecte De ZIKZIN」。チャン・グンソクさんの所有ではなく、プロデュースなのかどうかも、いまいちわからない。ただ、サイトの情報からわかるのは、“チャン・グンソクの「Jyo Zikzin!!!」(韓国語意味:直進)”ということだけ。座右の銘的なフレーズを、ブランド名に使ってる?
1階はセレクトショップ、2階はCAFE&DINING、3階はネイルサロン。
collecte de zikzin


だけど調べてみると、けっこうショックを受けちゃって。ソーシャルメディアでの発信も、必要な情報プラスαぐらいで、そんなに大してやられていないようです。つまりは、煽っていない。それなのに、これだけ行列して並んでくれる? 
下の写真は、左が23日の昼、右が24日の朝。これぐらいのプロモーションで、連日何百人単位で並んでくれるなんて、脅威です。


ZIKZINの行列













整理券を配っていて、もらった人しか入店できない。もらっても、その人たちが順番待ちで炎天下に並んでいるということなんでしょうね。


ZIKZINのTwitterアカウントのフォロワー数は、13000人強。うちが運営をやらせていただいているTwitterアカウントでも、ちょうどこれぐらいのフォロワー数ですし、イベントの時には並んでもらうことを、とりあえずは直接的な目標としています。
だけど、ここまでの人数はムリですし、炎天下に何時間も待ち続けてくれるなんて、想像もできません。

ZIKZIN ツイッター画面
@collecte_zikzin

これを見るかぎり、プレゼントするのはiPhoneのホームボタンに貼るアクセサリーのようです。しかもZの文字だけ。これって、ファンの間でしか伝わらない記号。いや、ファンなら誰でもわかる? 少なくとも、ファン以外の人には、さっぱりわからないですよね。
普通は、もうちょっとキャラクター的になっていると思うんですが。
そこが、ZIKZINの巧妙な戦略だと思うのです。わかる人にしかアピールしない記号。つまり、かなりオトナっぽい。既婚の女性がこのアクセサリーやグッズを持っていたところで、ご主人にもわからない。職場で使っていても、「ダサっ」とは思われない。

CAFE&DININGにしても、韓国料理とイタリアンの融合というだけで、チャン・グンソクさんと特に関係はなさそうです。写真を見ると、めちゃくちゃオシャレ。盛りつけもですけど、ちょっと渋谷にはなさそうな、ワンランク上のオシャレさ。表参道の創作レストランという感じです。

ネイルサロンも写真を見る限り、チャン・グンソクさんのポスターや衣装がディスプレイされているわけでもありません。

1階のショップは、何度何度も前を通っていますので、自然に目に入っています。高級っぽいセレクトショップなんだろうなとしか思いませんでした。名前すら、出てないんですから。

Collecte De ZIKZIN 1階

Collecte De ZIKZIN 入口



今回の行列は、21日から始まっているようです。その内容は、ニューアルバムの発売や武道館ライブに連動してのiPhoneアクセサリーのプレゼント、記念の限定メニューが出るということぐらいのようです。
扱う商品は、ライフスタイル全般。その拡大方法は、BEAMSなどアパレルのセレクトショップのようです。だけど、BEAMSやジャーナルスタンダードが同じようなプロモーションをしたとしても、これだけの行列はできないと思います。ここまで強力なインバウンドマーケティングは、なかなかないでしょう。


ここでしか、今しか買えないアイテムを買ったり、今だけのメニューを食べる。そのために整理券をゲットして炎天下に並ぶ。しかも武道館にも行き、CDを買うというフルコースの人も多いでしょう。ファン以外からするとまるで苦行のような行動が、ファンの世界ではヒエラルキーを構成していることでしょう。
iPhoneのアクセサリーを貼れば、ファンの間では、まるで水戸黄門の印籠のような扱いになるのかもしれません。今日の夜は閉店後に前を通ったのですが、店の外でスマホをいじっているファンらしき人たちがいました。すでにSNSでは発信済みでしょうし、行ったファン、行けなかったファンともやりとりして盛り上がっているはずです。




広告くさい広告が売れず、マネタイズへの気合いが臭ってくるような方法論に対するアンチテーゼのようにして登場した『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』という本が、昨年話題になりました。本に書いてあること自体は、とりたてて新しいことではなく、たぶんグレイトフル・デッドというバンドが、経営的なエキスパートを近寄らせず、ファンに喜んでもらうんだと気持ちを優先させただけだと思います。それがネットの時代になって、『フリー』や『シェア』的な情報が流通する仕組みにマッチしてきたということでしょう。周囲にグレイトフル・デッドのファンがいないのでわかりませんけど、ヒッピーカルチャーから出てきたバンドだから、ファンだって憧れというよりも、ライブという場をゆるく楽しみたいだけでしょう。
ただ、新しく登場したバンドがグレイトフル・デッドに学んだとして、コアなファンの獲得はできても、存続していけるかどうか。グレイトフル・デッドは、音源はそんなに売れないのに、興行収入では常に1〜3位に位置するそうです。




ZIKZINの方法論は、ファンにとって、ファンであることの価値を最大化してくれるような仕掛けなんだという気がします。何を聴く、何を食べる、何を着る、何を持つ、どんなコミュニティに属する、どんな感情や情報を共有する。それらのすべてが、ちょっと上質に用意されているという気がします。しかも疑似恋愛気分も味わえる。
年齢とともに目新しいものは、どんどんなくなってきますし、新しいコトや商品の選択の基準がわからなくなる。たぶんチャン・グンソクファンになるということは、プチ上質な世界を知ることができるというのと、ほぼイコール。一緒に何かを作り上げながらコアなファンを育成するファン・マーケティングでもなく、キャラクタービジネスでもなく、世界感を共有させるマーケティング。
ものすごく上手だと思います。






2013年5月12日日曜日

エシカルとかフェアトレードという方向性

先週のことですが渋谷のDISELショップ内にあるDIESEL ART GALLERYで、コラボレーションプロジェクト「 DIESEL + EDUN 」を記念したエキシビション、「STUDIO AFRICA」というのをやっているということで、出かけたついでに行ってきました。

EDUNというのは、U2のボーカル、ボノが妻と立ち上げたファッションブランドです。「ハイファッション」と「新興国の安定雇用」を結びつけることを目的とし、商品は(厳密に検査・許可を受けた)アフリカ、南アメリカ、インドなどの現地工場を活用して作られているそうです。
アフリカの貧困撲滅運動や人道支援などで、ノーベル平和賞候補になったこともありますし、世界的な、人道支援のシンボリックな存在だと言えるかもしれません。
ただ日本でのEDUNの知名度は、ほとんどないように思えます。


そのEDUNにDIESELの創始者レンツォ・ロッソが加わって始まったのが、コラボレーションプロジェクト「 DIESEL + EDUN 」。そしてこのコラボを記念したエキシビジョンが「STUDIO AFRICA」です。はぁ、ややこし。

画像:DIESEL + EDUN   STUDIO AFRICAチラシ


「STUDIO AFRICA」のコンセプトを、サイトから抜粋すると
ファッション、映画、音楽、写真など様々なフィールドでアフリカの発展のために積極的な活動を続ける、才能溢れる9人の若手アーティストを紹介します。本エキシビションでは、「STUDIO AFRICA」のキャンペーンビジュアルや、キャンペーンに抜擢された南アフリカのフォトグラファートリオ、I SEE A DIFFERENT YOUの 作品を展示します。
http://www.diesel.co.jp/art/i-see-a-different-you/
※5月10日までのエキシビションなので、いつまでウェブページが残されているかどうか定かではありません。

チラシには、「このプロジェクトでは北部ウガンダにEDUNが設立したConservation Cotton Initiative Ugandaで生産された最高級の綿を使用しており、生産工程全てをアフリカで行なっています」と書いてあります。


DIESEL + EDUNの商品について私が予想してたのは、EDUNだけだとハイブランドの価格帯だけど、DIESELで扱うことで多少は安い方向へシフトするのかと思ったら、そんなことはまったくなかった。ジーンズが36,000円代でTシャツが14,000円もするから、お手頃なものがないDIESELという感じでしょうか。
最高綿を使って、アフリカで持続可能なビジネスモデルを創出するというのですから、しょうがないのかもしれませんが、それにしても、というお値段。


そもそも私はDIESELって、値段は高いけれども、それに品質が見合っているという印象はあまり持っていません。デザイン性は、さすがにイタリアだと思いますけど。
それはさておき、やはりDIESEL + EDUNのコラボになっても、基本は富裕層がターゲットだということなんでしょうか。

欧米は寄付の文化だといわれますが、寄付をするつもりで値段の張るものも買うということなんでしょうか。私自身は、応援するつもりで買うなら、間違いなくアフリカよりも、岡山デニムにするでしょうね。



3年ほど前に日経MJがエシカル消費についての記事を書いていました。それによると、“エシカルとは、「倫理的」「道徳上」という意味の形容詞。エシカルコンシューマリズムとは、環境や社会に配慮した工程・流通で製造された商品を選択し、そうでないものを選択しない消費活動”という定義でした。日本では、こういう解釈でエシカルが捉えられているのではないかと思います。

欧米では、それが、もうちょっと富裕層や指導者層の“たしなみ”的な解釈なのではないかと勝手に思っています。
グローバル企業が行なう、焼き畑農業的な安い賃金を追いかけて次々により後進国へと生産拠点を移していくビジネスモデルは、いずれ追いかける先がなくなります。アフリカ諸国では、輸出するための農作物を安い賃金でつくっていて、自国では食料危機が続いているという矛盾も指摘されています。
そういうことへの揺り戻しが、“たしなみ”的に起こっているのではないかという気がします。


ボノよりも先に、「エコ・エシカル・サステナブル」をやっていたのは、チャールズ皇太子です。チャールズ皇太子はすでに80年代に有機農業は始め、90年代には有機食品ブランドを作り、成功しています。食材だけじゃなくお菓子やシャンプーみたいなものまで販売してるんですね。

DUCHY ORIGINALS FROM WAITROSE 



かつては変人扱いされていたチャールズ皇太子が、2012年に英『GQ』誌からベスト・ドレスト・マンに選ばれるようになったのか。それは服装の背後にある皇太子の行動や考え方が、今の英国社会から支持されているということにほかなりません、と『モードとエロスと資本』の著者・中野香織さんがGQ JAPANのサイトに書かれています。

GQ JapanPeople



イギリスはエシカル的な意識が高いのか、高城剛さんの『オーガニック革命』という著書の中に、ロンドンでは「パンクスが自分で栽培したオーガニック野菜を売っている」と書かれていました。※2010年の出版です。
ということは、富裕層だけの傾向ではないのかもしれません。


イギリスでエシカルといえば、天然原料をベースにした化粧品ブランドTHE BODY SHOPが思い浮かびます。ボディショップは創業当初から、世界各地に伝わるハーブや木の実などの天然原料を使ったスキンケアの知恵に着目し、化粧品づくりをしていることで知られています。
そして1987年には「援助ではなく取引を!」をコンセプトに、独自のフェアトレードプログラムを始めています。それだけではなく、「私たちのバリューズ(価値観)」として打ち出し、エシカルに考えられることをフルラインナップじゃないのかというぐらいにやられています。


画像:THE BODY SHOP 私たちのバリューススクリーンショット


日本でボディショップの商品を買っている人の多くは、バリューズのことをそれなりに知っていて、利用しているように思えます。やはり長年、変わらぬスタンスが信用度高いですね。
資生堂も、一般化粧品での動物実験を廃止すると打ち出したそうです。これは動物実験を経た化粧品がこの春以降、EU域内で販売できなくなるのに対応するためだと言われています。一概に動物実験ダメだとなると、医薬品はどうするんだろうという疑問があります。医療かどうかの線引きは、国によって異なるそうですし。
もちろん原料の仕入れ先が動物実験をしていてもアウトですから、かなり厳しい。このことに関しては、日本は後進国。どうしたって排ガス規制と同様に、先を競って対応した方が勝ち、という状況になるかもしれません。かつて排ガス規制を先取りした研究開発が、日本車のアドバンテージを作ったように。

なぜだか日本ではほとんど報道されませんので、詳しい状況がわかりませんが、AFPBB Newsによると
EUでは「3月11日から、動物実験を用いて開発された化粧品の販売が全面禁止となった。EUでは1990年代以降、動物実験が段階的に取り締まられ、2009年には対象化粧品のほとんどが販売を禁じられたが、幾つかの毒性試験が例外となったままだった」
資生堂は「2011年に自社の研究所での動物実験を廃止しているが、今後はこれに加え、動物実験に頼る企業との原料取引や、外部の研究所への実験委託も行わない方針」
ということだそうです。他社はどうしているんでしょうね。

AFPBB News 
『動物実験化粧品の販売、EUで全面禁止に』




話を、もっと身近かなところにします。
よく飲食店などで、「チャイナフリー」と書いてあったりします。疑り深いのか、私はあまり信用していません(笑) そりゃあ塗料で色づけされたようなものや、ねずみで偽装とか、とんでもない食材は勘弁して欲しいですが、外食してたら中国産から逃れることは出来ないでしょう。
日本で禁止されている農薬を使うように教えたのは、日本人だという説がありますが、あながち外れてはいないだろうという気がします。また中国食材のすべてが、危険なわけではないでしょうし、これからどう推移していくんでしょうね。ただ気にする人が増えているのは、間違いないでしょう。



スターバックスコーヒーでは、ウェブサイト上でカロリー・アレルギー物質だけではなく、原料原産地情報も開示しています。ただ、原料事情などにより原産国が追加・変更される場合がありますとか、情報開示に対応していない店舗がございますと書いてあったりします。これはもうチェーン店である限り、しょうがないことだと思います。中国産も使っているようです。

そのスタバでは、フェアトレード認証コーヒー「フェアトレード イタリアン ロースト」という豆を売っています。うちの奥さんは、もうずーっとこの豆を買って来るんですが、当初私は「それなら、どうしてすべてのコーヒー豆をフェアトレードにしないんだろう」と思っていました。だけどフェアトレード認証を受けるということ、持続可能な調達モデルを作るというのは、とても難しそうです。詳しくは、下記のリンクを読んでみてください。スタバは「世界最大のフェアトレード認証コーヒーの購買者」なんだそうです。

またフェアトレード認証コーヒーは、コーヒー豆で売っているから意味があるんですよね。豆を買って、自宅で手間をかけて飲むから、まだ成立するのであって。これがお店で本日のコーヒーとして飲むということになると、払ったお金のほとんどが、人件費や家賃、空調や照明の電気代から、はてはWIFIなどの様々な設備代に化けてしまいます。つまり、代金のほとんどは場所代。そもそもコーヒー豆農家に渡る金としては、たぶん何円の世界なんでしょうね。

逆にコーヒー豆として、長年売り続けているからこそ、スターバックスコーヒーの姿勢はホンモノだろうと私は思っています。


ウェブサイト内に、こういうページはあるんですが、辿り着きやすいとはとても言えないんです。たぶん宣伝やPR的にフェアトレードを使っているのではなく、意識してフェアトレード豆を探す人だけに意図が伝わればいいと考えているんでしょう。イタリアンローストには、それ専用のポイントカードがありますし、小さいですが分厚いフェアトレードへの取り組みを書いた冊子を配っています。意識してフェアトレード豆を買う人数は、全体からすれば少ない割合でしょうけど、強固な固定客になっていると想像できます。



下の画像は、アイスクリームのBEN&JERRY'SのFacebookでの投稿です。そう、昨日5月11日は、世界フェアトレードデーだったんですね。BEN&JERRY'Sは、なんと全製品をフェアトレード認証の原料で作ることを公約しています。また元ホームレス、低所得者、公民権を奪われた人たちとその家族に職と支援サービスを行うことを使命としているベーカリーに、ブラウニーを発注していたり、平飼いのニワトリの卵を使っていたりしているそうです。





アメリカン・アパレルという比較的ベーシックなアイテムで、イメージとしてはセクシーさで売るブランドも、意外な顔を持っています。アメリカン・アパレルはロサンゼルスに巨大な自社工場があり、そこで染めから縫製までを行っていて、生産のほとんどを、この工場で行っているそうです。
サイトには、American Apparel garment workers are the highest paid garments workers in the world.と書いているぐらいですから、世界最高の給与をを誇りにしているんでしょう。
本当ならグローバル企業として、稀有な存在かもしれません。Made in Downtown LAと明記されていますので、歴史あるアメリカントラッドブランドより、アメリカ製であることにもこだわっている。それでいて価格帯としては、たぶんGAP等と同じぐらいですから、驚きです。アメリカン・アパレルは、スウェットショップ(低賃金、暴力や言葉による虐待、過酷な懲罰などの劣悪な労働環境)を廃止しようとアピールしています。

FACTORY TOURという動画を公開しています。
これは一階にあるストアの紹介動画ですが、20数本が公開されています。







私は支援に対する寄付だとか、そういう仕組みの商品プロモーションに複数回関わらせていただいたことがありますが、通常のプロモーションよりも、いずれも反応が鈍いという感触です。日本国内では、関心が薄いのか、あるいは戸惑ってしまうのか。
企業側だって期間限定でやっていますし、どれだけ本気なんだろう、ぐらいのスタンスです(笑) あるカフェに入って「このメニューの代金から、アフリカの○○支援活動に5円寄付されます」と書いてあったので注文したことがあります。でも食べながら、想像で期間中の売上や支援額をざっくり計算すると、あまりの少なさに笑ってしまったことがあります。これだと、送金などのための人件費や手数料で消えてしまうだろうと(笑)

3.11の復興支援で、多くの人が出した義援金。いつまで経っても必要なところに届かないグダグダぶりで、仕組み自体に疑問を持っている人だっているでしょう。


それでも企業が、エシカルという考え方を意識することはプラスなんじゃないかと思っています。利益を上げるためなら、なんでもあり。法令で禁止されていないことなら、何をやっていい。というような価値観に対して、どうなんだろう。日本でも、そろそろ歯止めが必要なんじゃないかと感じている生活者は少なくないでしょう。
もっと単純に、自分に害をなす商品はもちろん、知らない誰かに害をなして出来上がった商品は使いたくないという心情は、ほとんどの人にあるでしょう。

日本で大きなトレンドになるのは、まだまだ先でしょうけど、エシカルコンシューマリズムは、買ってもらえる理由にはなっていなくても、買ってもらえない理由になら、すでに現実化していると考えた方がいいではないでしょうか。






2013年5月2日木曜日

いいなと思った動画 Vol.2

広告的なものですけど、これはいいじゃない、見て欲しいなと思った動画をご紹介します。


Short film directed by Guy Ritchie starring David Beckham - H&M Spring 2013
『DAVID BECKHAM BODYWEAR FOR H&M』のプロモーションムービー。

出演は、もちろんベッカム。監督はガイ・リッチー。これはもう、ガイ・リッチーならではのユーモアに富んだカッコ良さ。これだけの動きの中で下着のフィット感も存分に見せてて、そんなにいいのかH&M! と思っちゃいました。



Vinnie Jones' hard and fast Hands-only CPR

一昨年の年末に、英国心臓財団が公開した動画。

マフィアらしき強面の三人。何を始めるのかと思ったら、まず救急車を電話で手配。この曲のリズムでプッシュすれば、キスすることなしに手だけで蘇生させられる。と教えてくれる。
確実に手順を記憶できて、見事な構成です。素晴らしい。


Mickey Mouse Brings Disney Magic to New York City

これも一昨年の年末に、ディズニーが公開した動画。

ニューヨークに登場したディズニーのAR。まるで映画のようにキャラクターと一緒に遊べる。この動画の作り方も上手ですけど、たぶんARの使い方としても、群を抜いてるんじゃないでしょうか。2011年なのに、今でも十分過ぎるほどの完成度。



CONTREX MASTER INTERNET


参加型のプロジェクションマッピングを使った、コントレックスのプロモーション。

火事を映し出して男性を救助させるため女性にポンプを漕がせて放水させるというもの。ウイットに富んでて、面白い。参加する女性は、仕込みっぽくはあるけど、その場の盛り上がりだけじゃなくて、後でどう伝えられるかも重要ですよね。
コントレックス、以前にも同じ構造でやってたけど、このフォーマットはいろいろ使えそう。





と、ここまではYoutubeばかりでしたが、最近注目されているVineも取り上げてみます。Vineは現在iOSだけの動画共有アプリ。Twitter社が買収したサービスで、6秒間のループ動画をTwitterにあげたり、こうやってブログに貼ることもできます。


画像:vine スクリーンショット

企業ユースはまだまだ少ないみたいですが、ご参考までに。
映画The WOLVERINEのTrailerに使われたことで、脚光を浴びました。

The WOLVERINE Trailer




これは、Berdorf Goodmanというニューヨークの高級百貨店もVine動画です。
ここはめちゃくちゃ作ってるようですよ。

The brides and the flower girl




Twitterの拡散力を考えると、Vineで誘導するのは、とてつもなく強力かもしれません。
ただ今年になってから始まったサービスですので、まだまだこれからです。2月ぐらいの時点では、自分のデスク周りを撮った動画ばかり(笑) 徐々にアーティスティックなものやペットを撮ったものが増えて来たようです。
私も猫を撮って、アップしているのですが(笑) 仕事でお会いしたエリートのアメリカ人とVineの話をしていたら、使っているとおっしゃてました。ちょっと驚いて、何をアップされているんですかとお聞きすると、「撮り鉄です(笑)」とおっしゃるので、さらに驚いたのなんのって。

私はやはり企業ユースだと、シズル感のあるものが適していると思って探しているのですが、どうもアメリカのフード産業のものはシズり方が違うようで、あまり(笑)
でも、日本だとイケそうですよ。