2014年9月26日金曜日

誰でも使える[Twitterアナリティクス]は、実践的に活用できる優れもの




Twitterが先月末、一般向けに[Twitterアナリティクス]を公開しました。Twitterにログインした状態で、下のURLのxxxを自分のアカウント(@の後の部分)にすれば、始めることができます。

https://analytics.twitter.com/user/xxx/tweets


[Googleアナリティクス]は独自の用語を大量に理解する必要がありますし、情報が多すぎで複雑です。Facebookの[インサイト]はかなり簡単ですが、詳しすぎるところや意味が明確ではないところも少なくないように思えます。
アナリストなどの専門家は別にして、詳しく分析する暇があるなら、特にソーシャルメディアの場合は実際に投稿してトライ&エラーしながら、効果的な運用に結びつけた方がいいのではないでしょうか。少ない人数で運用しているなら、解析に詳しくなっても効果的な運用ができないなら、本末転倒です。

その点[Twitterアナリティクス]は一目瞭然ですし、ツイートしたことのフィードバックが明確。なにより使いやすい。インターフェイスが優れています。
Twitterの運用をしているなら、使わないのはもったいないですよ。


今回は◎Twitterアナリティクスで、分かることと、◎Twitterアナリティクスで、効果がハッキリしたことの2つを書いてみます。



◎Twitterアナリティクスで、分かること



[28日間のインプレッション]
Twitterでは「ユーザーがTwitterでツイートを見た回数」としています。私はユーザーがログインしているときにツイートが表示されていた回数ではないかと思うのですが、アプリから見たのは含まれるのか、含まれないなど細かなところは不明ですが、ざっくり指標としてとらえればいいと思います。
28日間のインプレッションが棒グラフで表示され、右側には今日のインプレッションと28日間の平均インプレッションとの差が表示されます。


上の画像の下に一覧で、それぞれのツイートとそのインプレッション、エンゲージメント、エンゲージメント率が出てきます。


[エンゲージメント]
Twitterの定義は、こちらの画像をご覧ください。要するに何かしら反応してくれた回数ということですね。

何の反応もしてくれなかったからと言って、見てくれていないわけではないでしょうし、また反応してくれたからポジティブな意味があるとは限りません。



[エンゲージメント率]
Twitterは、「インプレッション数をエンゲージメント数で割ったもの」としています。



[個別のツイートのインプレッションほか、主要データ]
これがもっとも重要だと思っています。28日間のインプレッショングラフの下に並んだそれぞれのツイートとクリックすると、個別のインプレッションなどのデータが出てきます。実物を見ていただくのがはやいですね。




赤のグラデーションで塗りつぶしているところは、ツイート内容です。
右には、棒グラフで、最初の24時間にインプレッションされたタイミングが出ています。このグラフからすると2時間ほどで約4000人に届き、そのあとは少しずつ見られていると考えられると思います。リツイートされたのも2時間内に集中し、その後はアカウントのプロフィールページなどを見てくれた人が700人のほとんどかなと想像しています。


以上は、一番上の画像のナビゲーションで[ツイート]と書かれたページです。その他[フォロワー]と[Twitterカード]がありますが、Twitter広告を利用していなければ、そこまでする必要はなさそうです。
[フォロワー]のページで分かることです。


[2年間のフォロワー数の推移]
正確には2年間強ですが、推移が折れ線グラフで表示されます。

Facebookで[いいね!]を取り消された数字がわかるので、Twitterでもリフォローされた数を知りたがる人が多いですが、全体として増加していれば問題なし。Twitterを退会する人もいますし、リフォローの理由を探るのは不可能です。とにかく総フォロワー数は気にする必要がありますが。

個別のツイートの様々なデータが出るのですから、ざっくりとこういうツイートがいい悪いは簡単に判断できます。


その他には[興味分野][トップインタレスト][国別の位置情報と人気の都市][性別][あなたのフォロワーがフォローしている他の上位アカウント]などがあります。



◎Twitterアナリティクスで、効果がハッキリしたこと


[個別のツイートのインプレッションほか、主要データ]のところの画像を見てください。無料で、ひとつひとつのツイートのデータがこれだけ出るのですから、効果的なツイートへのチューニングの精度を、飛躍的に上げられるはずです。
画像を使った方がいいとか、そんな基本的なことではなく、たとえば[リンクのクリック数]などを知ることができるのですから、ECサイトへの誘導など、目的に沿ったチューニングが可能ではないでしょうか。


私がハッキリ理解できたことは、個別の打ち方よりも連携したツイートが効果的だということ。以前から同様に考えてやっていたのですが、指標になるものは返信とリツイートとお気に入りに入れてもらえた数でした。
それよりも[Twitterアナリティクス]で確認しながらやったことは、とても効果的でした。
ざっくりとご説明します。
まず下の画像を見てください。




このクライアントでは、新商品の発売がありました。
・Aはその広告写真を使ったツイートです。
・BCDは、それぞれ別にソーシャルメディア用にiPhoneで撮った写真を使ったツイートです。
※写真を使い分ける考え方は、こちらを参照してください。
SNSで使える生写真の撮り方


ABCDは、その順番が時間の流れです。
A-1は、発売日前。A-2は、発売日。A-2RTは、ユーザーから非公式RTされたものを、さらにこちらから非公式RTしたもの。
B-1、C-1はそれぞれかなりシチュエーションの違う写真を使いました。
D-1は、またかなり違う写真を使いましたが、D-2はバリエーションです。D-2RTは、ユーザーから非公式RTされたものを、こちらから非公式RTしたもの。
テキストはABCDそれぞれで、まったく違います。


これをどういうタイミングで打っていたかというと、夜中から朝までを除き、インプレッションの山がなくなって来たタイミングで、次のツイートをする。そうすると山がそれなりに続いていきます。

もちろん、同じ人が繰り返し見ている可能性も少なくないのですし、反応してくれるツボも違いますので写真とテキストを変えていく。その方が蓄積効果もでる。同じ人が見ている場合、同じ企業のツイートがタイムラインを占領してしまうことは、避けた方が懸命です。
そしてより広く多くの人たちが見てくれるためには、時間曜日を変えながらツイートした方がいい。そのタイミングを基準を持って決められるのは、個別のインプレッションをほぼリアルタイムで知ることが出来たからですね。






 ソーシャルメディアマーケティング、うまく行ってますか?




2014年9月19日金曜日

行列までして、買ってくれる理由 - 6

去年のiPhone5sも書いたし、今回も同じようなものだからパス。と思っていたのですが、iPhone6発売の行列はまったく様相を異にしていました。大混乱です。
行列までして、買ってくれる理由 - 4







この写真、うちのデザイナーに影とか加工しましたかと聞かれましたが、人の顔をぼかす以外何もしていません。今朝9時半ごろの曇天で、街路樹の影が建物に落ちています。なにか暗示でもしているように思えてしまいますが(笑) 
iPhone5で、すなおに撮りました。


前日から並んでいる大半の人は、中国人とホームレス?


アップルストア銀座には、発売10日ほど前から並んでいる人がいるというツイートが飛び交い、その後にはテレビなどでも次々に取材され、iPhone6発売を煽ります。世界中のアップルストアには、発売発表以前から並んでいるという報道さえありました。
こんなにバッチリ写しているツイートがありました。



でもアップルストア渋谷には、誰も並んでないよな。ずっとそう思っていました。

ところが昨日、18日の夕方6時ごろに出先から渋谷に戻ってくると、とんでもないことになっていました。公園通りを歩くと、アップルストアの先から人がつながっている。
ただブルーシートや段ボールを広げた上に、座っていて、どうも高齢者。子連れや若い女の子たちもいるけれど、なにか雰囲気が違うと思っていたら、あちこちで飛び交っているのは中国語。
私の前を歩いている人たちは、どうして中国人がこんなに多いんだろうと会話していました。


すでに渋谷区役所近くまで列が出来ていましたが、この雰囲気は他のお店からクレームが出てもおかしくない。バス停まで占拠されちゃってるし、と思っていました。

どうも自分で使うために並んでいる日本人は、二割程度かなと想像。つまりは転売、あるいは並ぶのを代行している人がほとんどではないかと…



中国のサイトには、日本での代購を請け負う業者が続々登場


17日の朝日新聞には、こんな記事が出ています。
iPhone6、世界最安は日本? 中国で代理購入流行

つまりは急激な円安で人民元換算すると、日本で買うのが最安値だから購入を代行しますという広告がいっぱい出ているということでしょう。

円安じゃなくても、渋谷ではファッションなどを大量に買い回る通販サイトなどのバイヤーらしき中国人を見ることは珍しくありません。リストを持って、とんでもない量を買っています。
ただ今回のiPhone6で並んでいる人たちは、そういう専門の人たちではなさそう。
購代(タイコウ)で、大量に日本にいる中国人に声がかかり、アルバイト的に臨時でやっている感じです。

中国の情報を扱うXinhua.jpには、こんな情報が出ています。

中国本土では今のところ発売の予定が示されていない。こうしたことから、中国本土市場では正式発売前のiPhone 6の価格がすでに驚くほどの高値まで吊り上っている。
香港から輸入する第1陣の50台はすでに予約で完売の状態。闇の市場ではスペックの低い機種の価格が1万3000~1万4000元(約23万2000~24万9000円)、また高いものでは2万元(約35万6000円)にもなっているという。
オーストラリアでは“マージャンしながら待った”中国人も 闇市場で35万円の高値


なるほど欲しい人は23万円出しても、すぐには手に入らないということですね。それはまあ、購代が流行るのも理解できる気がします。




そして自分で使いたい日本人が大量に並び始めたのは、たぶんその後。7時8時ぐらいになると、代々木公園の入口を曲がり、山手線方面にまで行列が延びていました。




今朝は、今までと比較すると大混乱と言える状態に


笑ってしまったのが、パルコ前の交差点。アップルストアに並ぶ人と前に書いた「ふなっしーカフェ」に並ぶ人たちで、すごいことになっていました。
行列までして、買ってくれる理由 - 5


そうなると困るのが他のお店。昨夜からスワロフスキーの前には人が溜まっていましたし、今日もユナイテッドアローズの前は、通行がしにくい状態でした。今日は8時からオープンしていたそうですが、ぜんぜん進まないじゃないかと怒鳴っている人も。
商店会、警備会社らしき人たちがアップルストアのスタッフにクレームを入れ、行列を後ろに誘導していました。


それだけではなく、あちこちに段ボールやゴミが散乱しています。アップルストア渋谷は、有効な対策を取らないと、今後発売待ちの行列自体が難しくなるかもしれませんね。
少し前、シュプリームの行列がとんでもないことになっていて、警察が出動した事態が起こりました。転売目的の業者が大勢並んだことが、原因のひとつだと聞きます。


今回、アップルストア渋谷で今まで以上に売れたとしたら、原因は購入代行ということでしょうね。

今までのように自分で使うために徹夜で行列する人たちは、どこに行ったのでしょうか。アップルストア銀座では、渋谷と同様どころか、警察が出動したと出ています。
【警察出動】アップル銀座で揉め事発生!割り込み・ゴミ捨て・代金持ち逃げ

渋谷は、ここまでは酷くなかったです。たぶん、ですけど(笑)


表参道はどうだろうと検索すると、東洋経済までもが取材していました。
表参道は多言語が飛び交う”お祭り騒ぎ”



経済誌なのに、一緒に楽しんでいる感じがします。アップルストア表参道店から外苑前駅を過ぎて伊藤忠まで行列がつながってたということですから、見てみたかったですね。ここでも警察が出たということです。


私はiPhone6のスロー動画やタイムプラス機能など撮影に関する機能が、とても気になります。気になっても、いち早くiPhone6を欲しいとは、まったく思いません。たぶん買うのは来年になってから、ぐらいです。それでも、行列を見るとワクワクするものはありますね(笑) 
ただ行列が恒例行事になってくると混乱するのは当然で、ワクワク感の拡大になるのならいいのですが、むしろマイナスにとらえる人だって少なくないですよね。
アップルのこれからは、「いち早く欲しい」と思わない層をどれだけ惹きつけられるかに、かかっていそうですよ。





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2014年9月16日火曜日

行列までして、買ってくれる理由 - 5

画像:渋谷パルコ入口のふなっしーカフェ看板

今朝、いままで実際に遭遇した中で、最大の行列を見ました。それはなんと渋谷パルコでやっている、ふなっしーとコラボした『FUNAcafe』の入場待ち。

これまでに書いた、マクドナルド・クォーターパウンダーの『行列までして、買ってくれる理由 - 3』や、アップルiPhone5Sの『行列までして、買ってくれる理由 - 4』で見た行列よりも、目撃した人数自体は多いと思います。
今日は9月16日。三連休後の平日の朝なのに、です。


オープン日の9月2日より、はるかに長い。先週も行列を見ましたけど、較べものになりません。パルコのオープンは朝10時からなのに、9時半にどんどん入店しているんです。どんどん入場しているのに、後から後から人が続きます。
たぶん、パルコの建物をぐるっと回って並んでいたんでしょうね。だけどこんなに人を入れても、パルコの中で待てないはず。いったい何が起こっているんでしょう。


画像:ふなっしーカフェの行列を写したg+の投稿

私が9月10日に、Google+に投稿したものです。
そして今朝撮ったのが、こちら
画像:ふなっしーカフェの行列を写したg+の投稿

写真の左端あたりが入口。Miu Miuの入口を開けていますが、角を曲がり、ずーっと人が続いています。もちろん、入口からはどんどん入店しているのにもかかわらず、です。


こんなツイートを見つけました。11時半ごろのツイートですが、「19時に並べる」整理券を写して投稿されています。つまり、10時間とか11時間待ち? あるいは、もっと? しかも「ラストオーダーに間に合わない場合もあります」と明記されています(笑)


同じ方が、その前に「7階から1階まで列…」とツイートしています。
ということはパルコがオープンする前に入店させているけれども、レストランフロアの7階までの階段に、ずーっと並ばせているということでしょうね。渋谷パルコの階段は、けっこう広いです。きっと館内は、大変なことになっていることでしょう(笑) 

公式のFacebookページを見ると、「本日の整理券配布は終わりました」と毎日午前中に投稿されています。それがメインです(笑) 



渋谷パルコのコラボレーションカフェの第三弾として登場


『FUNAcafe』は「キキ&ララカフェ」「マイメロディ カフェ」に続く第三のコラボとして、レストランフロアの中に展開。オリジナルメニューの他、グッズの販売も行なわれています。

どんなメニューを出しているんでしょう。
パルコだけあって、ファッション系のサイトにもパブリシティ記事が出ています。
画像:ふなっしーカフェオープンを告知するFASHION PRESS

画像:ふなっしーカフェのメニューを紹介するFASHION PRESS


これがなんと、17,600ツイートされ、2,209[いいね!]されています。この記事だけでですから、すさまじい拡散です。


しかしオープンから、どうして来店客数が尻上がりに増えているのでしょうか。拡散が続いているのでしょうか。
Yahoo!リアルタイム検索で調べてみました。


画像:Yahoo!リアルタイム検索で調べた[FUNA CAFE]

画像:Yahoo!リアルタイム検索で調べた[ふなっしーカフェ]


『FUNAcafe』では8月21日にピークが来ていますから、ここでパブリシティを打ったんでしょう。9月2日のオープンですから、その直前にも多くの発信がされています。上のFASHION PRESSも9月1日です。パルコ側から仕掛けたのは、この二回なのでしょう。
そこからは下り坂になっています。もうこれ以上来店されると困ると判断して、ひかえているのかもしれません。
ネガティブなものは、入れなかった人たちの嘆きが多いようです。


それにしてもツイートやFacebookでの投稿がどんどん下がっているのに、来店者数は上昇しているのはなぜでしょう。いやぁ、「買ってくれる理由」というタイトルなのに申しわけないですが、まったく想像もつきません。
間違いなく言えることは、二回ほどのパブリシティで、ほとんどのふなっしーファンの間には知れ渡った。ソーシャルメディアなんかに関係なく、梨友(ふなっしーのファン仲間)の絆が強く、ファンの入れ込み方が、半端じゃないということでしょうか。

そういえば大渕愛子弁護士がふなっしーのことを語るとき、よく泣かれていますものね。ふなっしーは、並みいるアイドルたちを蹴散らしています(笑)




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2014年9月11日木曜日

全米オープンテニスにみる、ユニクロの慧眼


うちの奥様はテニスをしていますが、WOWOWには加入していません。うちも入ろうか、たぶん入れないだろうと、なんとなく見送っていたのですが、WOWOWの受付回線がパンクしたとかしないとか。
テニス友だちは、皆さんWOWOWに加入していて、録画せず深夜や早朝に見ていたそうです。
錦織圭選手の活躍は、テニスをしない私でも地上波で流された部分だけで十分に興奮させられました。

WOWOWは、ウハウハですね。
いや、それ以上にウハウハなのは、なんと言ってもユニクロでしょう。近所のおじさんから「ユニクロのテニスウェア持ってる? 中高と軟式テニスしてたんだけど、また始めたくなった。硬式テニスできるかな?」と話しかけられたそうです。ユニクロのテニス向けモデルに、そもそもレディスはないようですが(笑)




私はユニクロのウェブでの展開を、継続的にチェックしていました。もう大企業とは思えない速さです。


ウェブサイトやソーシャルメディアで展開するスピードがすごい!


8月24日のツイートです。
画像:ユニクロのツイート

ジョコビッチ、錦織、国枝各選手モデルの、8月25日からの販売を告知しています。もちろん先に生産し、販売できる体制を整えていたところが並じゃないですし、国枝選手モデルまで揃えているところが素晴らしいです。(国枝選手は車いすの部シングルスとダブルスで優勝!)
ただリツイート数は27、お気に入りに入れられたのが17ですから、拡散度合いとしては、寂しい限りです。


9月3日のツイートです。ジョコビッチ vs 錦織の準決勝は日本時間で7日です。
このあたりからがソーシャルメディアでも、凄まじいことになってきます。

画像:ユニクロのユニクロ対決ツイート

自ら「ユニクロ対決!」というフレーズを作って煽っていますし、ハッシュタグまで作っています。8月24日のツイートと比べると30倍近くバズっています。

同様の投稿がFacebookページでも行なわれていて、4,351人が[いいね!]して、シェアが207件という爆発ぶり。Facebookはそれだけじゃないんです。そのあともプロモーション的投稿はありますが、三選手の試合の写真をアルバムに投稿しています。
これがまたベストショットばかりで。買ったのかもしれません。新聞各社が一面や号外に使っている写真よりも、臨場感があります。しかも[いいね!]もシェアも、ユニクロ対決を上回ります。


9月8日国枝選手優勝おめでとう、そして錦織圭選手準優勝おめでとうのFacebookでの投稿です。

画像:ユニクロの国枝選手優勝のFACEBOOK投稿

画像:ユニクロの錦織選手準優勝のFACEBOOK投稿


国枝選手のものが、5,700人が[いいね!]でシェアが211件。錦織選手のものが14,722人の[いいね!]でシェアが271件。もう連続で大爆発しています。

選手のファンの人たち、そして試合に熱狂した人たちをソーシャルメディアでここまで惹き付ける展開は見事です。テレビなら世界大会で日本人が活躍すると、キラーコンテンツになりますが、ソーシャルメディアでこれだけの熱狂は、今までに例がないのではないでしょうか。
しかもマスメディア、特にテレビではほとんど取り上げられていない国枝選手をキチンと追っていますし、エンゲージメントしています。



ジョコビッチ、錦織、国枝各選手と契約したのは、いつ?



ユニクロは機能性ウェアに力を入れていますので、スポーツに目を付けるのは当然だと思いますが、三選手と契約したのはいつなんでしょうか。
三選手の活躍がなければ、ユニクロが何を投稿しようが、ここまでの爆発はあり得ないでしょう。


ノバク・ジョコビッチ

世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ選手との契約は、2012年の5月。
当時、話題にしていたのはテニス関連の情報サイト。ジョコビッチ選手の日本での知名度は、一般的には低いでしょう。
テニスファンの間では話題になっていましたが、それまでがセルジオ・タッキーニというイタリアのスポーツウェアブランドと契約していたので、ユニクロになったことは衝撃的だったと思います。
他では、経済系としての話題ぐらいでしょうか。

きっとユニクロとしては日本国内ではテニスをする人たち以外への広がりは、それほど期待していなかったでしょう。それよりも世界戦略として、ということでしょうね。



錦織圭

錦織選手との契約は、その1年以上前。2011年1月。テニスファンの間では大きな話題になりましたが、一般的にはどうでしょうか。
2011年10月には、世界ランク30位になり、それまで日本人最高位の松岡修造さんの46位を抜き去ります。しかし契約の前年は、年初、怪我の影響でランキングを失います。復帰後は2010年の56位を回復したようです。


Googleトレンドで調べてみました。検索ボリュームがそのまま話題の大きさではありませんが。
画像:Googleトレンドで[ユニクロ 錦織]を調べた結果
2014年9月11日現在で9月の検索数を100とすると、2011年の1月は7しかありません。


このタイミングで錦織圭選手と契約を結ぶのは、ファストファッションとしてはかなり大胆です。
「これから世界に打って出るブランドのアンバサダーとして期待した」(柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長)というユニクロは、錦織のためだけの特別チームを編成。契約金も「それなりに圭を評価してくれるだけのものを用意してくれた」と錦織の所属事務所のIMGは話す。
日本経済新聞

やはり日本国内でどうかということよりも、世界戦略としてということですね。テニス人口の多いヨーロッパで活躍が期待でき、好感度の高い日本人の錦織選手がアンバサダーということになれば、そのままユニクロのポジションとイメージ的にオーバラップさせられるということでしょう。



国枝慎吾

国枝選手は、世界ランキング1位。パラリンピックでもシングルスで2度ダブルスで1度、金メダルを獲得した超強豪選手です。
ユニクロと契約を結んだのは、2009年8月。同じアンバサダーという名称が使われていますが、国枝選手は所属契約。詳しい内容は明かされていませんが、一般的にはスポンサー契約より手厚いと考えて良さそうです(ちなみに錦織選手は、日清食品の所属)。

「世界中のあらゆる人々の生活をより良い方向に変えていく」という共通の価値観に基づき、ウェアの提供や共同開発にとどまらず、環境問題や教育問題、貧困などの社会的課題の解決に向けた活動を共同で推進しています。ユニクロでは、今後も高品質なウェアの提供を通じて、国枝選手をサポートするとともに、国枝選手と連携して、より良い社会の実現に向けた活動に取り組んでまいります。
ユニクロ プレスリリース 

なるほど、ユニクロの理念/社会的使命を体現する選手ということですね。




スポーツウェアとカジュアルな機能性ウェアの違い


今のところユニクロは、テニスウェアを販売しているのではなく、選手が着用したレプリカモデルを販売しているようです。ウェブサイトでも、錦織・国枝選手モデル、ジョコビッチ選手モデルの特集ページで、同じドライ機能を持ったウェアを販売しています。


「シーンを問わず着用していただける」と書かれているように、カジュアルウェアとしてきてもらえればいいというスタンスでしょう。それは成功しているように思えます。
そもそもレプリカモデルじゃなくても、機能性の高いウェアを作っているという評価が得られれば大成功ではないでしょうか。

スポーツ新聞のウェブ版に、ユニクロ担当者への取材が掲載されています。
最大のこだわりはウエアの重さにある。錦織の場合は「ほかの選手より上半身をひねるので軽すぎると体に巻きついちゃう」傾向があった。そこで最軽量化したウエアよりもやや重いものを着用。襟の部分で重さを調整したという。
錦織にウエアを選んでもらう際、複数のサンプルを用意するが「本当にグラムの違いが分かるんです。私たちは持っただけじゃ、どちらが重いか分からない。タグを見ながら説明していた。でも、本人は着ただけで分かる。体が繊細で(感覚が)研ぎ澄まされているんです」。数グラムのズレも錦織は見逃さなかった。続いての特徴は足元にあった。「滑るので、踏ん張るためにも靴下はしっかり作ってほしいと言われています」
東スポweb
信頼性の低い東スポですけど(笑)  それでもこういう要求に応えたウェアを提供していることは、信頼度が高いですよね。ノウハウを、カジュアルウェアにフィードバックできますし。

ナイキやアディダスなど専門メーカーは、イメージは高いですが、ユニクロには届かないスポーツウェアを作っているかというと、たぶんそんなことはないと私は思っています。シューズは別として、これはスポーツ用じゃないと思えるアイテムも数多くあります。個人的にタオル類などは、ナイキもアディダスもスポーツシーンで使うことを考えているのかと腹立たしくなるほどです。
デサントなど日本のメーカーの方が、相対的に良く出来ている気がします。でもユニクロが目指しているのは、そんなスポーツゴリゴリのシーンのウケではないでしょう。



他のスポンサーより、速くて巧みだったユニクロ


錦織圭選手のスポンサーは、Wikipediaによるとこうなっているそうです。


  • 日清食品(所属契約)
  • ウイルソン(ラケット)
  • アディダス(シューズ)
  • ユニクロ(ウェア)
  • ウイダーinゼリー(トレーニング・栄養)
  • カップヌードル(パッチスポンサー)
  • タグ・ホイヤー(時計)
  • ジャックス(クレジットカード)
  • デルタ航空(航空)

日清食品は、2008年9月にスポンサー契約を結び、2012年4月に所属契約に変更したそうです。ですが、ソーシャルメディアではカップヌードルでしか関連の投稿を行なっていないようです。
カップヌードルのFacebookページも、多くの[いいね!]を集め、シェアされていますが、ユニクロの1/3程度でしょうか。コメントも少なく、商品に直結するわけでもないので、なかなか辛いところです。ツイッターは、どうもないようですね。
ただ錦織選手が自主的に使っているというチキンラーメンのひよこちゃんバッグが、ツイッターでバズっています(笑)
画像:ひよこちゃんバッグに関するツイート

日清食品はボーナスについて公表しませんでした。ユニクロは会長のポケットマネーと会社から1億円出すと発表し、NHKまで取り上げたほどです。



タグ・ホイヤーは、読売新聞の出した号外に全5段の広告を出稿、それをツイートしていました。また急遽「錦織圭選手 応援キャンペーン」を開催。ハッシュタグを付け、応援メッセージをツイートしてくれた人へ抽選で5名様へ、錦織圭選手のサイン入りポスターをプレゼントとするというものなのですが、これがもう悲惨な結果のようでした。
Facebookページでは、カップヌードルと同等の反応を得るのですが… Facebookとツイッターを行き来させようとする試みは、内容的に無理があったように思えます。
またウェブサイトのトップでは、これを書いている時点で「決勝戦へ」となっていますので、ユニクロのような素早さはありません。


アディダスは、ツイッターの「アディダステニス」のアカウントでツイートした、これが最高の反応だったようです。
画像:アディダスのツイート

アディダスジャパンが、【錦織圭選手サイングッズプレゼントキャンペーン】として抽選でポスターをプレゼントとやっていますが、これもなかなか厳しい反応のようです。


今後スポンサー各社ではCM出演などが計画されていると思いますが、ソーシャルメディアを中心としたウェブ戦略、そして広報戦略としてもユニクロが際立って優れていたと私は思います。




最後にYahoo!のリアルタイム検索で、[錦織]を調べた結果です。錦織圭とか錦織選手と書いてる人もいるので、[錦織]にしました。
画像:Yahoo!のリアルタイムで[錦織]を調べた結果
試合のあった日に集中していますね。それにしても決勝戦が終わった後は、なんと76,000件です!

[ユニクロ 錦織]では、どうでしょうか。錦織選手の100分の1ほどの注目度ですが、けっこう持続しています。ユニクロの店舗やオンラインショップでの対応、ソーシャルメディアでの発信やその他でバズっていたり、様々なメディアで取り上げられていることが効いたのではないでしょうか。
画像:Yahoo!のリアルタイムで[ユニクロ 錦織]を調べた結果






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2014年9月4日木曜日

炎上する構造とダメージについて考えてみました


画像:炎上のイメージ


バズる方法は、あちこちで書かれています。反対に炎上論みたいなことも、あちこちで書かれています。
少し前に仕事の打ち合わせで、「Facebookは、炎上しないでしょう」みたいなことを聞かれました。実名制だから炎上しないという趣旨なんですが、実名制だって炎上しますよと説明しました。企業のFacebookページが炎上してないように見えるのは、単純にコメントを削除しているからではないでしょうか。


考えてみると私は、このところ年に数回ほど「そんなことすると炎上しますよ」と言っています。
ソーシャルメディアでは、炎上が可視化されやすい。でも私が言っているのは、ソーシャルメディア上だけじゃなくて、発言せず見ている人もいくらでもいますし、リアルなクチコミが広がったり、マスメディアも取り上げたり、現実的なダメージが出ますよという意味なんです。



◎炎上は必ずしも避けなきゃいけないことではない? 



ある外国の政府機関の人たちの前で、「そんなメッセージは、炎上しますよ」と言ったことがあります。最終的にメッセージの根本は変更されずに、ニュアンスだけ変えることになりました。
ソーシャルメディア上では、炎上とまでは行かないですが、ボヤってました。後日聞いたのは、「そんなことは折り込み済み」。つまりは選挙と同じで、反対意見が出ようと、多く票を獲得できれば当選する。当選することがゴールだということです。
そう聞くと確かに反対意見のないメッセージなんて、あるわけがない。ただ反射的にネガティブな反応が出て、それが連鎖して出てしまうようなアプローチがいいかというと、そうでもない。


ECの普及段階から、炎上マーケティングをしている企業もあります。ECサイトなら、どこで炎上しようと売上は伸びる。炎上させるのはタダだと言っている経営者もいますから(笑)
ブランドイメージはどうであれ、瞬間的に売上が向上すればいいとというモデル。これはいいとこ取りでパクリ合い、つぶし合いのバイラルメディアと似ています。PVを最大化して、広告収入を得られればいいという仕組み。



前置きが長くなりましたが、炎上って、そんなに単純ではないですよ。ソーシャルメディア上のことだけではないですし、ということを書いておきたかったんです。
それでは、この夏の炎上から。




LINEの乗っ取りは、どうして炎上しないのか




どんなに対策をしていても、LINEの乗っ取りが止まらないようです。[LINE 乗っ取り]でYahoo!のリアルタイム検索をしてみました。

画像:line乗っ取りのリアルタイム検索

8月1日には8000件に迫る勢い。その後、急落して落ち着いていますが継続して2000件前後ありますから、かなりの関心事です。ただ、感情分析はネガティブ・ポジティブがほぼ同じ。運営側の責任を問うもの、乗っ取られて落ち込んだ、腹が立つという投稿がネガティブ。ではポジティブはなんでしょう。おいしい、楽しいと書かれています。


もうすでに、多くのユーザーに[LINEは乗っ取られるもの]だと認識されているのでしょう。著名な人たちも、乗っ取られたとツイートしたり、ブログに書いていますから。そして今は、乗っ取り犯に対してどうやって遊ぶか。ネタにするかという段階に。
以前は「天安門」と返せば撃退できるということでしたが、すでに面白対処法が、あちこちでまとめられています。撃退じゃなくて、遊ぶ。

あるミュージシャンの人が乗っ取りにあって、落ち込んでいました。ところが友人のミュージシャンが、その乗っ取り犯と遊んでる様子が面白くて、「笑いにしてくれて、ありがとう。サイコー」だとツイートされています。

画像:line乗っ取り犯と遊んで笑いにしてくれたことを感謝するツイート

「愛で応えるという戦法」で遊んだ方が、以降の拡散の様子を書かれています。

まとめサイトや掲示板に書かれたのは、Yahoo!のリアルタイム検索では出てきません。リアルタイム検索やGoogleトレンドで調べられる何倍も何十倍も拡散していると考えていいのではないでしょうか。


一般的には[LINE 乗っ取り]は、とんでもない炎上をしているレベル。だけど、それを上回るほどの遊んでいる面白さの拡散があるし、訴求力がある。なので炎上しているようには、見えない。楽しいなら炎上ではなく、バズってる(笑)
たぶんユーザー数の増減という意味でも、トータルではダメージはない。と私は想像しています。




期限切れ鶏肉問題で、マクドナルドのダメージは



上海福喜食品の問題は、中国のテレビ局が潜入し告発報道したことから、ブルームバークやウォールストリートジャーナルなどがアメリカの経済メディアが先行して取り上げ、それを日本のマスメディアが追従したという流れのようです。
そんな中、日本のマクドナルドではFacebookでユーザーが書き込んだ不都合なコメントを削除していたように見受けられます。
マクドナルドは、どうしてソーシャルメディアで叩かれるのか

上に書いたように、報道後もなんの変化もなく発信されていましたし、テレビCMも流れていました。ところがテレビでの報道を見て、知る人が激増してくると非難するコメントは止まりませんし、Twitterなどでも非難がどんどん増えて行きます。私は初期の対応を、完全に間違っていたと思います。


その後です。7月29日になってカサノバ社長が記者会見し陳謝。
ところが陳謝のタイミングが遅過ぎることや、日本に入ってきたという証拠がないから返金は考えていない。マクドナルドも騙された。という発言などが反感を招き、あちこちのまとめサイトでまとめられ、謝罪会見の模様がYoutubeにあげられ、さらに非難の声を集めます。
タイミングに関しては、ロイターによるとアメリカでは22日に謝罪が行なわれたということですし、21日には日本でもナゲットの販売を中止していたそうですから、かなり不思議です。
カサノバ社長の発言内容は、法的には責任がない、法的瑕疵はないという立場から出たものだと思いますが、日本では逆PRにしかならない気がします。


Yahoo!のリアルタイム検索で、8月に入ってからの注目度を調べてみました。

画像:マクドナルドのリアルタイム検索結果

ポジティブな発言が65%! 凄いです。事件の影響なんて、まったくなさそうです。
しかし1ヵ月で消えるものでしょうか。
仮説として、どんなことが考えられるでしょうか。
・そもそもネガティブに騒いでいたのは、マックに行かない人たちだった
・日本人は忘れっぽい
・変わらぬキャンペーン攻勢。そして大量の広告宣伝、PRが功を奏している
そのすべてかもしれません。


日本フードサービス協会が8月25日に発表した外食産業214社の7月の売上は、前年同月比2.5%減と2カ月連続のマイナス。梅雨明けの遅れや台風による客足減などが原因だということですが、日本マクドナルドは18%減少。
マクドナルドの発表としては「今期の業績予想未定」だとしたそうです。

7月29日(ブルームバーグ):日本マクドナルドホールディングスは2014年12月期の業績予想を未定にすると発表した。取引先だった中国の上海福喜食品が使用期限切れの鶏肉を使用していた問題で、業績への影響が見通せないため。
(中略)
会見に同席した今村朗執行役員は「日々の売り上げ予測の15-20%くらい」を鶏肉問題の影響で失っていると述べた。

今後、輸入食品のトラブルが出たら、何年もの間、テレビでは上海福喜食品の映像が使われることでしょう。マクドナルドを連想する人も、確実にいる。ボディブローのように、マクドナルドの業績に影響はすると思います。
ただリアルタイム検索の感情分析によれば急回復していますから、従来からのファン層には、それほど影響がなさそうです。年間を通しての売上は、15%から20%減という現在の数字と比較すれば、もっと軽いダメージになるのではないでしょうか。




ランサーズのキャンセル提案が無断使用されていた件の炎上度



8月19日、沖縄のホームページ制作会社が「ランサーズで提案し、キャンセルになったデザインが無断で使われている」とブログで告発。
8月20日、ランサーズは自社のインフォメーションページに「ランサーズにおけるキャンセル時の提案の不正利用に関しまして」とのお知らせを掲載。とても素早い対応ですが、ツイッターを中心に炎上します。

画像:ランサーズのリアルタイム検索結果

20日終日のツイッターやフェイスブックの投稿件数は、1700件ほどになっていました。その後、続々とまとめサイトやブログなどで不正使用問題が取り上げられています。
ところが、Yahoo!のリアルタイム検索上では終息しているような、ほぼ通常の注目度に戻りました。これはいったいどういうことでしょうか。

ランサーズのお知らせには、以降の経緯、対応等がまとめられていますし、被害にあった沖縄のホームページ制作会社のブログでも、22日には和解に向かっていることが書かれ、無断使用した不動産会社の名前も出ています。
沖縄ホームページ制作工房「株式会社wEVA」社長日誌

22日には、こんな記事もバズっていました。
ランサーズ編集部がまるで仕事をしていない事が判明

ランサーズ広報の方へのインタビュー記事も出ています。これも偶然だと思いますが、22日です。

仕事はクラウドソーシングでどう変わりつつあるのか



3つのリンクを読めば、ランサーズ/クラウドソーソングの構造や問題点もだいたい理解できると思います。ランサーズは「時間と場所にとらわれない新しい働き方」だとしていますが、そうでしょうか。


仕事を出す側は、どんな企業なのでしょう。利用規約を読んでも、公序良俗に反する行為などが禁止されていますが、公序良俗に反する企業だって仕事の依頼を出せてしまいます。ランサーズも直接訪問して確認しているわけではないですから。
また契約違反があっても、トラブルの解決は当事者間で。ランサーズに損害を与えた場合は、賠償しなければならないとあるだけです。
これだと「新しい働き方」というよりも、悪意を持った発注者を引き寄せやすい仕組みだという気がします。2つめのリンクにあるような画像20本~30本集めて文章書いて記事作って100円という仕事は、パクってこいと言っているようなものですし。

と書いても、そもそもクラウドソーシングってどんなものかというイメージが湧きにくいでしょう。そうなんです。実際の利用者や、関連するような業種の人じゃないと、実感がない。関係もない。今回の炎上も、利用者以外には共有されにくい。だからすぐに沈静化しているように見える。でも、どこか目立たないところに潜行して、燃え続けているかもしれません。


ランサーズでは仕事の発注者にくらべて、圧倒的に供給過剰に思えますので、仕事をしてくれる人の動きは、業績的にはほとんど関係なさそうです。売上の増減は、発注者数とその単価。今回のような炎上は、グレーもしくはブラックな発注方法を広めているだけかもしれません。

いまや非正規雇用が4割近いと言いますし、デザイン関連の職種はそもそもフリーランスが多いですから、デザイン系クラウドソーソングはこの先も拡大すると思います。ただ法的・社会的なペナルティのないマッチングのプラットフォームは、どんなジャンルであっても基本的に出会い系の仕組みと同じですから、健全化は運営者次第で出来るはずです。




◎コントロールできないのが炎上




炎上マーケティングといわれるものは、花火大会で屋台の焼きそばが売れるのと同じです。人出が増えれば、焼きそばの売れ行きも増える。でもどの屋台か憶えているわけじゃないから、来年の花火大会でもやはり人出だけが頼り。
どれぐらいお客さんが来るかをコントロールしようとしても、なかなか難しい。天候にも左右されますし、仮に来場者数が倍増したとしても、屋台の前を通るお客さんが立ち止まれなくなるかもしれませんし。

炎上した後、さまざまな不自然な対応が目につくことがあります。IR/投資家対策なのか、特に経済メディアで、この取り上げ方は裏が透けて見えると思えるストーリーに仕上がっていることがあります。ソーシャルメディアでは、削除やステルス的なやらせが対応策だと考えているような企業もありそうです。初期対応さえすれば、延焼は防げると考えている専門の会社もあるそうです。


一番の誤解は、可視化できるところだけを問題だと考えていることではないでしょうか。潜行して、どこかで燃え続けているかもしれません。
投資家がユーザーであったり、発信や反応をせず観察しているだけの人だって少なくありません。ユーザーや顧客じゃなくても、就職したい、アルバイトしたいと考えて見ている人だっているはずです。


どうしたって炎上する場合はある。LINEのケースのように勝手に遊びに変えてくれればいいけれど、そうじゃなければどうするか。姿勢としては企業であっても、個人の人柄が見えるような対応をするしかないと私は思っています。





人と人がいつでも、瞬時に、地球上のどことでもつながり合う能力「ラディカル・コネクティビティ」が、世の中を劇的に変えている。テクノロジーによってパワーが個人化したことでBIGが崩壊し、小さな者同士がつながると言っている『ビッグの終焉』という本があります。

『ビッグの終焉』のラディカル・コネクティビティまで意味的に過激ではなくても、Google会長初の著書と言われる『第五の権力』でも「インターネットでつながった市民」に権力が移ったとしているのですから、同じですね。



炎上についてこの二冊を出すのはチグハグですが、炎上を一過性のものだと侮っている企業もあるので、あえて取り上げておきます。
ベースにあるのがマスマーケティング的な発想だと、どうにもならないですよね。







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