2013年7月5日金曜日

ソーシャルシフトとGoogle+ [その2]

[その1]の一番下で、『ハスラー』という書籍を紹介しています。ハスラーとは、客引きという意味で、アメリカの「プロフェッショナルたちは、ICTの発達により、高学歴・有資格・専門知識だけでは“取るに足らない存在”になる」と書いてあります。
この本に登場するのは弁護士や会計士など国家資格が必要な職業が中心ですが、それでも「能動的に自らの能力を広報し、クライアントに営業しないと、これから先は難しいよ」というような論を展開しています。

最近、インターネットによる学びで、たいがいのプロは“知識”ということでは不要になるという主張があちこちで語られています。スガタ・ミトラという認知科学やA.I.が専門のMITの客員教授は「インターネットによって画一化を旨とする教育システムがやがて消滅する」と予言しています。「これからの時代、資格試験や卒業証書などは無意味になっていくでしょう。それよりも何ができるのかが問われます」と。

知識以外でも、やはりMITのふたりの教授が書いた『機械との競争』や、『ワイアード』US版編集長 クリス・アンダーソンの『MAKERS』では、要するに人間の技術がマシンに取って代わられるという趣旨のことが書かれています。






話を元に戻します。私がちょうど『ハスラー』を読んでいる頃のこと、知り合いがLinkedInで転職したことを知って、けっこう衝撃を受けました。その人は日本企業のアメリカブランチに勤めていた人で、中間管理職。それがLinkedInで、アメリカのグローバル企業の日本ブランチからオファーを受けた。
驚いたのは、その中身。英語でこれまでのキャリアをまとめた職務経歴書を書き、仕事以外の活動も記載。それだけではなく、上司や取引先に推薦文を書いてもらったそうです。まったく私には感覚的に、訳分からない内容で(笑)


日本にいる日本人にはどうもしっくりこなくても、海外にいる日本人にとっては当然のことなのかもしれない。次々に転職するのが当たり前だから、名刺を持っていても役に立たず、ビジネスならLinkedInにいることが、最低限のIDみたいなものなのかもしれないですね。



今回は、LinkedInやエリートの話? いえいえ、違います。ここからが、Google+のことです。たぶん日本人はSNSで、仕事とプライベートを明確に使い分けてる人って、少ないでしょう。エリート層以外はLinkedInへ、そんなに行かない気がするんです。英語がぺらぺらで外資への就職を考えている人や、用途によってプロフィールを使い分けている人ならまだしも。

ただ転職どころか会社の消滅したりとか、フリーランスやノマドになったりするがありふれたことになってきた今、居場所をソーシャルメディアの中に作っておくことが当たり前になってきている気はします、
年賀状ひっくり返したり、名刺を調べ直したりするのは、ビジネスでもプライベートでも、間もなく消滅するのではという気もします。

ケータイでキャリアを乗り換えて、メールアドレスが変わった。番号ポータビリティはあるけど、つながる人間関係をリセットしたいから、電話番号も新しくするとか。会社のメール、大手ポータルサービスのメールやモバイルのキャリアメールなどいろいろなメールを、G-mailに集約する人も増えているようですし。
アンドロイドを持つということは、Googleアカウントを作るということですし、Google+も作られてしまいます。あとは、本人が使って行くかどうか。



Facebookでは、なかなかそんな風には行きません。基本は日常的に個人的な楽しみで使うソーシャルメディア。
Google+はメールからマップからお店情報からソーシャルメディアまでが統合された、情報インフラとも言えるものではないでしょうか。SNSとしてだけ使いたいと思っても、知らず知らずに、他の機能も使っています。


SNSとしては、まず、つながり。Facebookでは詐欺容疑で立件されたネットサービスの社長と“友だち”になっている人には、同様のうさんくささを感じてしまいます。
Google+ではサークルに入れているか、いないか。入れられているか、いないかですから、つながり方は希薄です。その分、警戒心の強い人でも楽しみやすいかもしれません。

ただ、Googleが何を見ているかと考えると、まず誰とつながっているかでしょう。その次は、発信力とその領域。そして、コミュニケーション力。え、なんの話かわからないですか? 
このあたりは全部、私の推測です。Googleはこういう方向に行くしかないだろうと想像したものです。G-mailを使っていれば、メールの内容にあわせたリスティング広告が表示されるでしょう。いまのところ、Google+にそういう広告は出てきませんけど、少なくともGoogle+に書かれたプロフィールは、他のSNSと同様にマーケティングデータとして使うでしょう。そしてそれよりも、Googleが重要視しているのは、発信している内容とその領域とコミュニケーションだと思うんです。



なぜそんな風に想像するかというと、Googleは検索上からスパムを消し去りたいと血眼になっているはず。そんなこと書かなくても自明だと思いますが、ただのリンク集、まとめただけ、コピペだけで作られたサイト、そんなサイトが多いし、検索上位にも来るので、ペンギンアップデートやパンダアップデートをやっているんだと思います。
多くの人が騙されてしまう“なりすまし”や完全なパクリサイトは、人間が読んでもなかなか判断できないですし、パクっているだけなので更新が桁違いに速い。検索すると、そんなスパムが上位に来てしまうことが、問題になっています。



スパムじゃなくても、仮にですけど、あるジャンルの研究ブログの記事を抜粋し、まとめただけの「NEVER まとめ」が検索上位に来たら、おかしくないですか。ユーザー目線でいうと、まとめてくれた方が分かりやすい。気軽に読める。「NEVER まとめ」に載っていれば、流入も半端じゃなく、まとめた人にはお金が入って来る。
でも、オリジナルのコンテンツを作った研究者はたまったもんじゃない。Googleが、検索上でオリジナルをより上位に表示しなければ、単なる人気投票になってしまう。そういうジレンマを解消する方向を向いているのだと思います。


じゃあ解消するには、どうすればいいか。簡単に言えば、誰が書いているのかを特定すれば、それですみます。このウェブサイトは、ブログは、誰が書いていて誰が作っているのか、その署名があればいいわけです。その署名の裏付けとなるプラットフォームが、Google+だと私は思います。Author Rankという言葉がありますが、私はGoogleが導入しているのか導入していないのかは知らないです。ウェブサイトにAuthorを反映させるのは、技術的には簡単ですけど、単純にあなたがウェブサイトを持っているなら、Google+、あるいはGoogle+ページを連動させるだけでも、膨大な情報がGoogleに流れているのだと思います。

コンテンツを Google+ プロフィールとリンクする
検索結果に著者情報を表示する

企業・団体のウェブサイトなら、サイトの所有者を証明するpublisherを設定した方がいいと言われていますが、私はたぶん、ウェブサイトにGoogle+ページへの[ +1]ボタンを設置するだけで、ほぼ同様の効果があるのではと考えています。
お店などの場合はGoogleプレイスとGoogle+ローカルが統合されていますので、結局はGoogle+ページ。そのGoogle+ページを管理しているのは誰かという信用の問題になると、個人のGoogle+に行き着きつくのではないでしょうか。




たとえば、あなたが料理に関するウェブサイトでビジネスをしていたとします。Google+のプロフィールには料理研究家と書いているのに、料理に関する投稿がまったくない。飲食業会や料理人たちもサークルに入れていない、入れられてもいない。となると、料理のなんらかのオーソリティとは、なかなか思ってはもらえない。逆ならば、この人は間違いなく料理関係のオーソリティだと判断できる。


コメントを書いたり、書かれたり、そのコミュニケーションはどうか。ポジティブなワードが多いか、ネガティブなワードが多いか。あるいはbotのように紋切り型のコメントを繰り返しているか、+1しているだけか。そんな判定は、Googleのアルゴリズムなら簡単でしょう。なぜ、そんなことまで必要なのか。
炎上マーケティングのとりあえず目的は、トラフィックを一気に増やすこと。たぶん今のGoogleのアルゴリズムは、その膨大なアクセスが、ネガティブなものかポジティブなものかを判断できません。Google+内でのコミュニケーションなら、その手の手法や悪い癖の判別は簡単に出来るし、ネガティブな人の評価を下げることもできます。

「食べログ」では、やらせ問題が起こりました。でもGoogle+ローカルでは、Google+に登録している人しかレビューを書けません。おかしなことばかりを書いていれば、排除されるでしょう。
こういう構造は、ウィキペディアでも同じでしょう。登録利用者になるか、IPアドレスが表示される匿名利用者になるか。ウィキペディアは信頼性を、そういう仕組みで保っています。かつては、こんな出来事もありました。

今後もしGoogle+が求人市場に乗り出せば、ブラック企業判定も簡単に行なわれかもしれませんし、人物評価もやるでしょう。オークションやフリーマーケット的なことをやったとしたら、利用者に評価してもらうだけじゃなく、それ以前にGoogleが評価していて表示順位を操作するかもしれません。




LinkedInで転職した知り合いが、上司や取引先の人から書いてもらったリコメンドによる「客観的な信用度の向上」。それと同じようなことが、Google+では日々、ほぼ自動的に行なわれていると考えることが出来るのではないでしょうか。
なんか、なんでもかんでも把握されたり、評価されるのって、私は気持ち悪いですけどね。でもインフラとして無料で使っているなら、ある程度はしょうがないかなという気がします。



[その3]に続く




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