2017年3月31日金曜日

「猫まみれ展」尾道市立美術館のツイッター運用が、カンペキすぎる







尾道市立美術館がツイートした「猫と警備員の攻防戦」が話題になっています。尾道市立美術館に、なんども侵入を試みる近所の猫。それを優しく阻む警備員さんとの攻防。
もっとも拡散した3月22日のツイートは、これを書いている31日の夕方の段階で、84099リツイート いいねが99104という凄まじさ。




猫の動画もあります。




なぜこの猫が美術館に入りたいかといえば、大きなガラス越しに見える作品「猫も歩けば」が気になるから。



3月18日から始まった「招き猫亭コレクションー猫まみれ展」の開幕前日から、 近所の黒猫が目をつけたのですね。仲間がいる。こいつは味方か敵か、みたいに思ったのでしょうか。うちの猫も窓の外に知らない猫が来ると猫なで声を出したり、威嚇したりします。
ちなみに一番上の写真は、うちの猫のモフモフの脚です。猫まみれ展とは、関係ありません。

私も猫好きなので、尾道市立美術館のツイートには、いい!と率直に反応し、「猫と警備員の攻防戦」が拡散した理由も納得です。
でも、それだけではないんです。以前、森美術館について、こんな記事を書きました。
「村上隆の五百羅漢図展」森美術館のソーシャルメディア運用が、カンペキすぎて困る

森美術館のソーシャルメディアマーケティングは、とても巧みです。SNS、特にTwitterの運用には目を見張ります。でも尾道市立美術館は、公立。東京にいくつもある巨大な公立美術館だって、どこもこんな風にはやれません。もっぱらお金のかかる宣伝をしているだけです。森美術館が予算やブレーンも豊富な大企業だとしたら、尾道市立美術館は無名なローカルの中小企業みたいなもの。圧倒的に不利なスタートラインなのに、あまりに見事です。
地方自治体が「恋するフォーチュンクッキー」や「逃げ恥」でYouTube動画を作るのとは、わけが違います。
尾道市立美術館ウェブサイト


拡散する渦を、さらにかき回している@bijutsu1


尾道市立美術館の公式ウェブサイトTOPページには、コンテンツ扱いでTwitterへのリンクバナーが貼られています。いや、Twitterに限らずSNSの投稿は、コンテンツなのです。






展示内容の情報発信ばかりか、ウェブメディアや新聞、テレビで取り上げられたこともツイートしたり、一般の人たちの言及をリツイートしたりしています。つまり尾道市立美術館のTwitterアカウント@bijutsu1 を見ていれば、「猫と警備員の攻防戦」周辺の話題がわかります。
そしてそのことで、話題の拡散がループして、さらに大きな渦になっていきます。

「猫と警備員の攻防戦」は、ネットメディアではねとらぼ、BIGLOBEニュース、Withnewsなどに取り上げられ、それがYahoo!ニュースにも取り上げられています。この手の流れで重要なのは、当たり前ですがその順番。

 ◯Twitterやインスタで話題
 ↓
 ◯ネットメディアが取り上げる
 ↓
 ◯テレビや新聞が取り上げる


そして、そのすべてを@bijutsu1が取り上げています。




広く長く、猫好きをひきつける@bijutsu1


普段から美術館に足を運ぶ習慣のある美術好き、という人はそれほど多くありません。ほとんどの人が、アートを見に行くという狭い動機以外で足を運ぶのです。
「村上隆の五百羅漢展」のときには、作品を背景に自撮りする女性が少なからずいました。外国人では、半分以上が自撮りしていたかもしれません。

尾道市立美術館だって「猫と警備員の攻防戦」がどれだけ話題になっても、「猫まみれ展」に足を運んでくれなければ、意味がありません。予算的にもTwitterが主戦場なら、広く長く話題が続かないと、来館者数を増やせません。
だからメディアに取り上げられたこともツイートで紹介し、一般ユーザーの言及をリツイートしたりしているのです。

それ以外でも、尾道市立美術館のTwitterアカウントは抜かりありません。「招き猫亭コレクションー猫まみれ展」は3月18日からですが、2月22日「猫の日」にもちゃんと乗っかって前告知しています。



SNSばかりか、あらゆるメディアで猫の話題はキラーコンテンツのようです。過疎化著しいGoogle+ でも、猫のコミュニティは活況です。
猫の日には多くの企業が乗っかりますが、商品やサービスとの関連性のないところがほとんどです。Twitter上で猫の可愛い写真や動画を見たいと、「猫の日」を検索する人に引っかかっても集客や購買にはほぼ関係ありません。それで関連商品やサービスを作る企業が出て来るのです。
2月22日「猫の日」に、企業アカウントはどう乗っかったのか

尾道市立美術館は猫まみれ展をやるのですから、関連性は濃く、写真だけで終わらず、なにこれと展示内容まで知ってくれる可能性はかなり高くなるはずです。
@bijutsu1は「アッ!!昨日(2月22日)の猫の日を忘れておりました」と、つぶやいています。これ、意図的にやっていたとしたら見事です。

トレンドに乗っかることは得策ですが、猫の日のような突風が吹き荒れているときは、あまりに多くのツイートがあるので、埋もれてしまうのです。Twitter内でトレンドをクリックして検索する(一覧を見る)人の目にとまるのは、画像や写真や動画の力が秀でているものだけ。すでにフォローしてくれている人は別にして、アカウントを知らない人を引きつける可能性が高くなるのは、タイミングをちょっと外した方がいいのです。



来館者数増加につながる可能性は?


尾道市立美術館に来館する人の、交通手段はどうなのでしょか。アクセスを見ると電車なら尾道駅からバスに乗ってロープウェイに乗るそうです。あるいはタクシーなら15分。
車なら山陽自動車道のふたつのICから、15分20分だそうです。
予想以上に、けっこう厳しい条件です。

でもいままでの来館者の平均が、車でなら1時間エリア圏内だとすれば、もしかするとTwitter初の話題で1時間半エリアにまで伸びるかもしれません。新幹線を使ってやってくる家族だって、出てくるかもしれません。
美術館にしては珍しく、家族を呼び込むイベントも行われています。

逆に美術館に行く習慣のない人、尾道市立美術館を知らない人、従来の来館者より遠いところに住む人たちにまでリーチしなければ、来館者数が増えることはありません。「招き猫亭コレクションー猫まみれ展」では、Twitterで火がついて、ネットメディアで爆発、テレビや地元新聞にまで広がったので、従来にはない広い層にまで届いたのは、間違いありません。

さらに、そもそも尾道は「猫の細道」があったり「キャットストリートビュー」があったりと、猫好きが海外からも観光にやってくる街。そんな人たちにも届いている確率は高いので、高い確率で来館するんじゃないでしょうか。
@bijutsu1のツイートには、位置情報が付いています。尾道へ観光でやってきて、「猫の細道」で写真を撮ってツイートした人が位置情報を付けている。それを見た猫好き、尾道に猫を見に行きたいと思っている誰かが、位置情報をクリックすると、@bijutsu1のツイートも出てくる。そんな知り方だってあります。この位置情報付きなのも、ポイントです。


とりあえず春休みが終わる4月の上旬までの土日は、家族の来館者が増える。猫まみれ展は5月7日までなので、GWは他県から訪れる人たちもいて大混雑と私は予想しますが、どうでしょう。



@bijutsu1は、スタッフが撮りためた美術館周辺の猫スナップをご紹介なんてことをしていて、話題の続け方としても上手だし、本気で猫好きなのか伝わってくるし、とても好感が持てますね。





2017年3月27日月曜日

プレスリリースが根本的に間違ってる気がするのは、私だけ?





重い重いプレスリリースがやってきた


少し前、ある企業からPDFになったプレスリリースがメールで送られて来た。届いたときから嫌な予感はしていたのだけれど、開いてみて絶句した。
とにかくデータが重い。すぐ気がついたのは、フォントが埋め込まれてる。商品写真ばかりか、まるで商品写真ように撮ったノベルティなどまで、とにかく写真が多いのです。

その企業の上の方の方とあったときに「プレスリリースは、どちらでお作りなんですか」と聞いてしまった。
内容がどうこう以前に、PDFの機能をほとんど知らないんだろうな感にあふれた書類だったので、素人がやっているんだろうなと思い込んでいた。ところが、素人ではなかった。
「どこか、いけませんか?」と問い返されたので、いやその、これは全部間違っていると思いますと正直に答えてしまいました。


プレスリリースは、誰に向けて出すものなのか?


プレスリリース、ニュースリリースと言うぐらいだから、報道してもらうためのもの。辞書的な言葉の定義はそうなるだろうけれども、報道機関に向けて書いてそれほどの意味があるでしょうか?
100歩譲って、報道機関やマスメディアに向けて書くとしても、あらゆる情報を網羅して、それを誰が読むでしょう。網羅したければ、ウェブサイトに掲載すればいいわけで、記者や書き手に興味を持ってもらわなければ、なにも始まらない。スペックなど事実項目は必要だけれども、あとは要点が簡潔にまとまっている方がいい。と思うのです。記者や編集者、ディレクターだって、それほどヒマではありません。


どれだけのメディアに出せるか、数や大きさに注力しても


PR専門の会社は、プレスリリースに限らず、取り上げてもらうための様々なアプローチを、出来るだけ多くのメディアにしようとするかもしれません。
でもそこを頑張るなら、メディアに媒体料を払ってペイドパブにすればいいのです。
そうではなく、純粋にメディアの切り口で取材してもらって取り上げて欲しいと考えるなら、リリースする商品やサービスに合うメディアを選んでアプローチした方がいいのではないでしょうか。

多くの場合、専門会社はマスメディアとのパイプを誇っていたりします。1時間のテレビ番組になったり、石原さとみさんがブランドの服を着てくれるなら別ですが、多くの場合情報バラエティ番組などで取り上げられるだけ。
認知度的にはプラスでも、誰がどういう状況で見ているかを考えないと、意味のないケースだって少なくありません。

下のグラフは総務省 平成26年版 情報通信白書[主なメディアの利用時間と行為者率]から抜粋して、簡略化しグラフ化したものです。平日の数字だけですが、休日も割合はそれほど変わりません。



これを見ると実質的にマスメディアはテレビだけで、しかも20代ではネット利用時間に逆転されています。
当たり前のことですが、誰でも接しているメディアが存在しないのですから、誰に向けて出している商品なのかをより細かく考えている必要があります。メディアの側も、当然そこに向けてコンテンツを作っているわけですから。

またネットのコンテンツはバズる可能性もあります。話題のリーチは、利用時間だけでは想定できません。


ネット上でプレスリリースを公開する意味は、どこに


上に書いたことは常識だと思いますが、ネット上でプレスリリースを公開する場合はどうでしょうか。自社のウェブサイトで公開するほか、リリースを配信するプラットフォームも増えてきています。
公開されているものをざっと見て行っても、ほぼ紙のものを、そのままネット上に上げているところばかりなので驚きます。業界向けに発信しておきたいということなのでしょうか。BtoBなら、それもあるかもしれません。

オープンなネット上で公開するということは、ネットメディア以外とは逆に、誰でも見るということです。従来のコンサバティブなメディアも、面白系やバイラルメディアだって見るかもしれません。
もちろん一般の人たちだって辿り着く可能性は、高いのです。
配信するプラットフォームだってSNSで発信することで、アクセス数を増やそうとしています。一般の人がわざわざ辿り着く場合は、その商品やサービスが何かしら気になっているからアクセスしているはずです。


最大の間違いは、記載するURL


先週、たまたまTwitterを見ていたら、郊外型紳士服チェーン店を核としたアパレル企業が、アディダスと組んだストレッチ素材のスーツをZOZOタウン限定で発売開始という告知を見ました。私は画期的な商品に思える。どんなのか知りたい。良ければ買いたいと思い、プレスリリースに書いてあるURLからZOZOタウンにアクセスしました。
するとその企業のタイムセール商品が、ずらっと出ています。あ、これはブランドページだ。じゃあさらに絞り込んで、とやっと辿り着きました。

同様にあるアンダーウェアメーカーが、部屋着で、そのまま外へ着ていけるマルチユースウェアを発売したことを知りました。これも画期的に思えました。若者を中心にパジャマが売れなくなり、特に街着としてのジャージがラグジュアリーブランドからもユニクロからも発売されるようになって、内と外との区別がなくなっているように感じます。
プレスリリースのURLをクリックすると、その企業のECサイトが現れました。下着がずらっと並び、さまざまなキャンペーンバナーが並んでいます。マルチユースのウェアを探してずーっとスクロールしていくと、ほぼ一番下にバナーがありました。クリックすると、商品一覧ページが出てきました。
しかし、そこにはプレスリリースにあるイメージ写真に写る商品がないのです。あるのは、なんの変哲もないジャージやTシャツにしか見えない商品… 


興味を持った、買いたいと思った人が、そのプレスリリースから飛んだ先が、直接的なページでなくていいでしょうか。飛んで、そのあともいろいろ探してくれるのは、よほど熱心な人だけです。以前からのファンなら、そうするかもしれません。

メディアは、どうでしょうか。強い関心ではなく「もしかしたら面白いかもしれない。ニュースバリューがあるかもしれない」と感じたぐらいで、さらに積極的に情報を探してくれるほど、社会的な意味で魅力のある商品でしょうか。

BtoC企業でも、記載するURLを、まるでIRのように考えているのかもしれません。



ソーシャルメディアマーケティングとして、イメージ写真との乖離はどうなのか


ネット上でイメージ写真に写っている商品が、発売されていないのは論外です。発売予定なら、それを明記すべきです。がっかりさせるだけではなく、反感を買いかねません。
そんな大げさな?

現実に販売されているハンバーガーが、広告写真とこんなに違う。貧弱だと晒されるのは、SNSの年中行事です。年中行事だから、もう炎上しないだけです。
食以外でも、それは同じ。SNSでウソだという意見が大勢を占めれば、どんなジャンルだってダメージは少なくありません。石原さとみさんがドラマで着た服が、すぐに売れてしまいます。錦織圭選手は、試合の休憩中ウイダーインゼリーを食べていますし、ユニクロのウェアを着ています。それらはウソではないし、現実に買うことのできる商品です。乖離していません。

ウソかどうかの判定は、法的にどうかではなく、あくまで社会通念上が基準。しかもその社会通念はSNS上のものですから、変わって行くスピードも早いのです。